2024-12-20

Steam Engine / STEAM ENGINE

 

STEAM ENGINEは、木村紘Dr.、馬場智章Sax、佐瀬悠輔Tp、渡辺翔太P、古木佳祐Bからなるユニット。丸の内コットンクラブでの初ライヴから全公演Sold Outとのことで、2024年本作は待望のファーストアルバムとなります。「ジャズを聴いたことがない人にも魅力が伝わるようなメンバー、楽曲」のコンセプトどおり、誰が聴いても“熱い”演奏が充満している作品です。

J-POPやアニメ音楽をたまに聴いてみると、「うわっそこからそんな展開...」「複雑なリズムだわ」と感じることもままあって、おそらく作者や演奏家はジャズも聴いたりしているのではと思ったりします。もしかしたら日常的にJ-POPを聴いている人にとって、STEAM ENGINEの楽曲は「歌はないけれど、カッコいい」くらいで抵抗なく入り込めるのかもしれません。そしてジャズ聴きの僕にとっては“本格的にジャズしている”と感じるアルバムなのです。

タイトル曲1.Steam Engine からガツンとジャズをスチームしてきます。こりゃライヴで聴きたくなるわけだと思わせる演奏です。次の2.Intersection で、なんとなく寄り添ってくる感じです。5.Blue Lights になるとクラブでかかっていそうな雰囲気。理屈っぽさを排除して、ジャズの美味しいところを抽出したアルバムです。老若男女問わず、多くの人に聴いてほしいな。

2024-12-17

ポタフェスに行ってきました

 

ポタフェス(ポータブルオーディオフェスティバル)にお誘いをうけて行って来ました。オーディオ関連のイベントには興味があって時々見に行っていたのですが、こうしたヘッドフォン/イヤフォン中心のイベントは初めての参加でした。

    人混みすごい。

ハイレゾストリーミングサービスQobuz(コバズ)の中心人物の方々とお会いできたこと、発売したばかりのワイヤレスイヤフォンの製造元の方とのランチに同席できたこと、興味アリのヘッドフォンの試聴ができたことなど、「行ってよかった」でお誘いに感謝するばかりです。

それにしても開場前から長蛇の列で、イベント会場は大盛況でした。オーディオイベントといえば、僕も含めて白髪まじりのオジサマが多いイメージでしたが、今回は若年層も多く幅広い客層で、試聴で漏れて聞こえる音楽も実にさまざま。そうかイマドキのオーディオ好きはこちらに来ている人たちだったんだと、改めて思い知らされました。

そして試聴する曲は、自分のスマホやデジタルオーディオプレイヤー(DAP、デジタルウォークマンとか)で持参するのが「当たり前」なのでした。てっきり展示社側が用意した音源を聴くのかと思っていたのが間違い。できればDAC(デジタル→アナログ変換、iPhoneは内蔵していないのでポータブルなDACが必要)も持参して、ヘッドフォン端子を挿せるようにしておくのがよい、というマナー?も学びました。

初代ウォークマンをつけて秋葉原を歩いていた中学時代から45年。秋葉原の街並みも変わって、外国人観光客で歩道は混雑。ポータブルオーディオもデジタルを経て随分と多様化しました。全体からみれば少数派であろう“いい音”を求める人々もまだこれだけ多くいるのはうれしいことでした。

2024-12-13

Solid Jackson / M.T.B.

 

M.T.B.とは、ブラッド・メルドーP、マーク・ターナーSax、ピーター・バーンスタインGの頭文字。1994年のアルバム以来30年ぶりの2024年新作となります。ラリー・グレナディアBとビル・スチュワートDr.をバックに名手の彼らにしかできないスリリングな演奏を繰り広げています。

ブラッド・メルドーはメセニーの「Metheny Mehldau」で初めてじっくり聴いて以来、その特異な存在感に影響され、数々のリーダー作を追っかけ聴きしました。そしてマーク・ジュリアナDr.との挑戦的なアルバム「Mehliana」ではそのぶっ飛び具合に驚かされたり。一見普通のジャズ?と聴き始めるのですが、だんだん「ナニこれ」なコード進行やメロディに不思議な感覚となり、やがてそれが癖になっていきます。セッションしているバンドメンバーもつられてオリジナリティが開いていくようです。

メルドー作のタイトル曲1.Solid Jackson から普通かと思ったら全然普通じゃない進行が聴けます。こんなんでアドリブするわけですからジャズミュージシャンってスゴい、というか超絶なメンバーなんですけど。さらにこのメンバーでウェイン・ショーターの3.Angola を演奏するという達人たちが達人(宇宙人?)の曲をという印象です。大好きなピーターが作った7.Ditty for Dewey でちょっと落ち着いてと思いきや、いつもと一味違う感じ。年末に来てこれぞジャズなアルバムの発表となりました。

2024-12-10

洋楽のリズムはカッコいい?

 

その昔、「洋楽のほうがカッコいい」理由のひとつに“リズム”についてよく語られました。よくある話は「日本人は1拍目と3拍目」あるいは拍均等、「洋楽は2拍目と4拍目」にアクセントがあるというもの。表拍に対して裏拍、バックビートとか言われて今でもYouTubeなんかでもよく出てきます。たとえば西城秀樹の「YOUNG MAN」とヴィレッジ・ピープルの「Y.M.C.A.」のリズムの違いでしょうか。

僕は幼少期は歌謡曲で育っていますし、実は表拍もいいよねと思っているほうです。でも大学時代にバンドを演るようになってから、ちょっとわかってくるようになりました。腹にくるというか腰を揺らすというか、一言でいえば“グルーヴ”を感じるのは2拍4拍に重心が乗っかって、円を描くようにリズムが回転していくような感覚を感じたときに「これだ」と思いました。

それは裏拍なファンクだけでなく、ハードロックを演奏しているときもそう感じたわけです。その感覚でもって洋楽を聴くと「たしかにカッコいい!」と思えるようになりました。結果的に圧倒的に洋楽を聴くことが多いわけですが、その一因として“リズム”があることはたしかです。

一方で、ここ数年のJ-POPヒット曲を聴くとテンポが速いというか、ちょっと性急(つんのめり?)なリズム、が多いように感じます。いや、海外の曲にも多いかもしれない。そしてそれはそれでカッコいい曲だったりするので、ひと昔前の「洋楽のリズムは...」なんて捉え方をミュージシャンはしていないのかもしれません。自然と使い分けができるようになったということだと思います。

なんて言いながら、ニュー・オリンズ勢のネヴィル・ブラザーズやザ・ダーティー・ダズン・ブラス・バンドのライヴを聴いて、グッと重心の効いたリズムにノリノリになっていますけど。

2024-12-06

Odyssey / Nubya Garcia

 

Nubya Garcia(ヌバイア・ガルシア)はイギリス・ロンドンのサックス奏者&作曲家。2024年の本作は4年ぶりのセカンドアルバム。10歳からサックスを習い始めジャズを演奏するようになり、作曲活動をとおして様々な経験を積んで活躍しています。ジャズの巨匠たちやレゲエからの影響が感じられます。

ウィズ・ストリングスとは違うシンフォニックなアルバムで、ジャズの枠を大きく拡げている作品だと感じます。緻密に構築されたサウンドはまるでプログレとかダブを聴いているかのよう。目の前に大きく広がる音宇宙に放り出されたような気分になります。

1.Dawn はエスペランサ・スポルディングをVo.に迎えた壮大な曲。次のアルバムタイトル曲につながって全体の雰囲気を印象づけます。サム・ジョーンズの高速ドラムに乗せた3.Solstice はドラムンベースとも思えるカッコいい曲です。90年代風のイントロで始まる9.Clarity はリズムにレゲエを感じながら彼女のゆったりとしたサックスを聴くことができます。全体的にはちょっと緊張感が高くてとっつきにくいかもしれないので、まずはオーディオ的に横に奥にひろがるサウンドを感じながら聴いていくといつの間にか浸っている、そんなアルバムだと思います。

2024-12-03

ボニー・レイットを聴く日々

 

せっせと、あれよあれよと、ボニー・レイットのアルバムを集めてしまいました。ドン・ウォズとの仕事を終え、マイケル・フルームとチャド・ブレイクをプロデューサーに迎えた「ファンダメンタル」から最新作まで。

ボニー・レイットのCD

なにがいいってまず、音。クリアで高域から低域までバランス良く出ていて、どの楽器もグッと前に出てくる。ベースやバスドラの迫力良し。やっぱり特にスライドギターの音がたまらないです。サブスクでもいい音は感じていたのだけど、CDで聴きたくなってしまったのです。アナログで聴いたらもっとスゴいかも。

そして、曲。ノリノリもバラードも僕のツボでした。似たような曲で飽きるかなと思っていたのですが、全然そんなことない。聴けば「うん、この曲もいい」ってなってまた聴いている。彼女の声と曲がこのうえなく合っているんでしょうね。バラードはほんとに沁みます。

ボニー・レイットを昔から聴いている方は、もっと前の時代のものが好きなんだと思います。それらもサブスクで聴きましたが、僕には近作のほうが好みのようです。というわけで、何か聴こうかとまずボニー・レイット、ほかのをいろいろ聴いたらまたボニー・レイットに戻るみたいな聴き方をかれこれ1年以上続けています。