2024-10-29

「クイーンⅠ」(2024 Mix)聴きました

 

クイーンのデビューアルバムが「クイーンⅠ」として2024年最新リミックス&リマスターがリリースされました。メンバーが望む音と曲順を実現させたとのこと。特に以前のドラムスの音が「ボスッ、ボスッ」って感じだったので「なんでこんな音で録っちゃったんでしょうね」なんて言っていました。今回はまさにロジャー・テイラーの音。フロアタムが低音まで鳴り響きます。

僕は大学時代および社会人になっても、大学の先輩でもある“日本のロジャー・テイラー”(現QUEERのDr.=ロジャー M.T.、シンコーミュージックからロジャー・テイラーのムック本を2冊出版)と一緒にバンドを演ることがほとんどだったので、自ずとクイーンを聴く機会も多かったのです。

1曲目のKeep Yourself Alive のギターは大昔コピー(多重録音はやっていませんが)したので何度も聴きました。2.Doing All Right はスマイル時代の音源を含めて好きですし、ブライアンのギターとしては、3.Great King Rat や7.The Night Comes Down のイントロも大好きです。後期にはない陰影のあるサウンドがいいです。

そして2024年作は、さすがに聴き慣れた音と違って、ちょっとマッチョになった感がありますが、オーディオ的にはダイナミックレンジ広く気持ちよく鳴ってくれています。Apple MusicのDolby Atmosを5.1chサラウンドスピーカーで鳴らすと、コーラスやギターやディレイやエコーが部屋じゅうに拡がって、彼らの緻密で奇想天外なアレンジに再度驚くことになるかと思います。

2024-10-25

Portrait / Samara Joy

 

Samara Joy(サマラ・ジョイ)はアメリカのジャズ歌手。2021年にデビューし、2022年アルバム「Linger Awhile」で一躍有名になりました。2023年にはグラミー賞で最優秀ジャズヴォーカルアルバムと最優秀新人賞を受賞。当時ジャズ関係では数多く目にしていたので、みんな聴いているからいいかなと思いブログに書きませんでした。

2024年本作は3作目。24歳とは思えない本格的なジャズ歌ものです。2019年にサラ・ヴォーン国際ジャズ・ボーカル・コンペティションで優勝とのことで、まさにサラを彷彿とさせる歌いっぷり。有名になったアルバムのあとで売れ線を狙うかと思いきや、ぐっとジャズ魂を深めてきたのが気に入っています。

多くの管楽器をバックに優雅に始まる1.You Stepped Out Of A Dream はジャズ伝統の雰囲気。2.Reincarnation Of A Lovebird の独唱を聴けば並外れた才能であることがわかります。誰もが知るボサノヴァ名曲「想いあふれて/Chega de Saudade」の6.No More Blues を彼女がどう歌うかお試しあれ。高低強弱を駆使して、スキャットも入れて細やかな感情の起伏をヴォーカルで表現。聴いているうちに、気持ちが優しくほぐされていくようです。

2024-10-22

「危機」のBlu-ray Audio盤

 

プログレの名盤、イエス「Close to the Edge(危機)」のBlu-ray Audio盤を聴きました。

・2013 Stereo Mix(24bit/96kHz)
・2013 5.1 PCM(24bit/96kHz)
・2013 5.1 DTS-HD(24bit/48kHz)
・Original Stereo Mix (マスターのFlat Transfer、24bit/192kHz) 
・UKオリジナル・アナログ音源Transfer(24bit/96kHz )ほかにもいろいろ...

紙ジャケ、ちょっと作りが雑な輸入盤

あるロックバーで聴いたアナログ盤「こわれもの」の音が衝撃的で、腹の底からグイグイくるベース音とか空間に飛び散るギター&キーボードが記憶に残っていて、それに近いものを求めているところがあります。「危機」はそれほど鮮烈な音ではなかったこともあり、聴く回数は少なかったかも。

さてBlu-ray Audioはいかに。期待したのは“Original Stereo Mix(24bit/192kHz) ”です。192ですからもしや...と思ったのですが、「こわれもの」体験ほどではありませんでした。まぁ違うアルバムですから。でも各楽器の音がくっきりした印象です。

ではスティーヴン・ウィルソン2013ミックス&サラウンドに期待。というのはほかのアルバムでDVD-Audioの“音の太さ”を体験していたので、Blu-ray Audioもいいんじゃないかと。元の音源にもよるのかもしれないですが、DVD-Audioほどではないにせよ、サブウーファーのおかげもありぐっと重心が下がります。サラウンドの音の拡がりはスゴい。パイプオルガンが部屋じゅうに鳴り響き、「これぞ危機!プログレ!」となりました。

さすが容量の多いBlu-ray。ハイレゾ満載かつ特典音源も多くて楽しい。んー、でもアナログ盤の“太い”というのとは違うんですけどね。

2024-10-18

Better Angels / Peter Bernstein

 

ニューヨークのPeter Bernstein(ピーター・バーンスタイン)Gの2024年リーダー作。得意のSMOKE Sessionsから。ブラッド・メルドーP、ヴィセンテ・アーチャーB、アル・フォスターDrを従えてのオールスター・ギターカルテット。メンバーからして間違いないです。

僕はこの人の粒立ちのよいギター・トーンが好きなんです。グラント・グリーン、ケニー・バレル、ジム・ホールといったバップ&ブルージーな名手たちの系譜といいますか。1音1音しっかりと聴かせてフレーズを楽しませてくれるサウンドです。メロディやソロを単音フレーズを弾いて〜和音でつないでっていうのは出来そうで出来ない、ジャズギタリストならではのテクニックです。憧れます。

軽快な2.Ditty for Dewey はスイング感を保ちながら、一筋縄ではいかない和音感を楽しめる曲。やっぱりメルドーの独特ピアノから触発されているかな。タイトル曲5.Better Angels もシンプルなメロディなのに何か独特でバップ的です。ピーターのソロ8.Lament ではギターのサウンドを存分に味わえます。新譜でこういうジャズギターを聴くことが少なくなった今、貴重な存在なのではないかと。ほかのジャズスタンダード曲も洒落た素敵な演奏です。

2024-10-15

ヘッドホンを首にかけて

 

誕生日プレゼントの前倒しということで、娘にヘッドホンを買いました。ソニーのWH-CH720N。ソニー史上最軽量のワイヤレスノイキャンヘッドホンのことで、15,000円しないくらいでした。ネットで見てJBLとかオーディオテクニカとか候補にあったのですが、娘いわく「お店に見に行きたい」とのことで実際に手に取ってかけてみて、この機種に決めました。

いまのヘッドホン売り場って、音楽聴かないんですね。聴くことができる機種もあるんですが、この価格帯のものはヘッドホンをかけても音楽は鳴っていない or 鳴らし方がわからないようでした。音質は比較しなくていいのか...。

必要なのは「鏡」です。かけた感じがどう見えるか。“ちょっと横に出っ張っている”“洋服や帽子に合わせやすい、にくい”“首にかけたときどうか”あたりがポイントです。加えてかけ心地。長い時間かけていて疲れないかとか。

学校や塾の自習時間にヘッドホンをしている人は結構いるとのこと。電車に乗っていてもイヤホンではなくてヘッドホンをしている若者が多くなった気がします。娘は電車時はノイキャンの効きがいいのでイヤホンだそうです。それ以外は耳の中がムレないヘッドホンかなと。集中したいときは音楽もなにも流していないらしい。

密閉型だオープン型だ、やっぱり有線でヘッドフォンアンプにっていうのとは別の話ですね。まぁそんなんでも音楽を聴く機会が増えてくれればいいかな。ただでさえスマホの他のコンテンツに奪われがちなスキマ時間ですから。

2024-10-11

three of us are from Houston and Reuben is not / Walter Smith III

 

Walter Smith III(ウォルター・スミス3世)は、アメリカのサックス奏者。昨年の「return to casual」に続いて2024年本作はブルーノート2作目。同じくヒューストン出身のジェイソン・モランPとエリック・ハーランドDrの3人とヴァージン諸島出身のリューベン・ロジャースBという、そのまんまのタイトルを付けています。1曲を除いて彼のオリジナル曲だそう。

これぞ最先端のジャズというか、譜面とかどうなってんのという演奏です。かといってフリーでもない。「あーハイハイ...」とか言いながら演奏できるんでしょうから、バンドメンバーのジャズ脳は計り知れないなと思います。しかも難しい演奏であるにもかかわらず、曲全体を聴くとそれを感じさせないという、まさにプロがなせる技です。

1.seesaw をなぞるように聴いてみると、曲全体はうねるように強弱を付けつつ進行しているように思います。3.24 なんて各楽器で軽く会話しているようです。フレーズにフレーズで応える感じ。ジャズって自由だなーと。そのうえ4.Misanthrope's Hymn のような少しメランコリックな曲を流れるような演奏で聴かせてくれます。まぁ難しい顔せずに曲全体に浸ってみるのがいいのかなと思います。僕の好きなエリック・ハーランドのドラムスも相変わらずカッコいいです。

2024-10-08

デヴィッド・ギルモアのギター

 

先月“ジンジャー”にてnote仲間の方々と集まったときに、好きなギタリストにデヴィッド・ギルモアが挙がりました。その際オーナーがかけていた映像がカッコよくて見入ってしまいました。

実は最近やっとデヴィッド・ギルモアのギターの良さがわかるようになったんです。ギターキッズとしては音数は少ないし演奏は長いしテクニカルに感じなかったわけです。中学生の頃通っていた寺子屋のような塾に、なぜか見目麗しいオーディオが置いてあり、そこでピンク・フロイドを聴けといくつか聴いたのですが、なんともピンとこない。その印象が続いてしまいました。

黒いストラトキャスターに白いピックアップ、メイプルネック。ストラト弾きの僕としてじっくり耳を傾けるとこれがなんともシングルコイルらしい素晴らしい音。深めのディレイ&エコーもあって音色とフレーズが沁みるように伝わってきます。そうしてピンク・フロイドもギルモア中心な後期を聴くと、演奏も音質も痺れるほどいいです。

聴いていて、自分の中で鳴っている音がありました。ポール・マッカートニーの「No More Lonely Nights」のギターソロです。何度も聴いたこの印象的なギター。そうかギルモアだったか。

会話がきっかけとなり“知っていたけれどあまり聴かなかった”ミュージシャンを再発見できるのは音楽好きにとって楽しいことのひとつです。

2024-10-04

Lifescape / Taka Nawashiro

 

Taka Nawashiro(苗代尚寛)は日本のギタリスト、作曲家。医者になる道もあったそうですが、2017年にニューヨークの大学にてプロを目指し卒業時にはJohn Coltrane Awardを受賞するなど才能に恵まれたミュージシャンです。今は東京を拠点に、2024年本作でも日本を代表するジャズミュージシャンの馬場智章Saxや石若駿Drが参加しての作品となっています。

ジャケット写真のギターは、スペインのSoulezza Guitars(ソウレッツァ・ギター)というヘッドレスギターだそうです。彼のギターの音色はこのコンパクトボディから、歌うように滑らかな表情をみせる個性的なヴォイスが生まれているんだなと思います。フレージングも気持ちよい風のような印象を受けました。

1.WindBeast から複雑なリズムでありながら全くそれを感じさせない曲で、作曲家としての持ち味も感じました。2.Promise of 60 は女性ヴォイスも参加してスリリングな曲。キレのあるドラムソロプレイが光ります。表題曲8.Lifescape は静かでありながら彼のギタリストとしての味わいを感じることができる作品。ニューヨークと東京をまたいで、新しい創作のあり方やコラボレーションを実現した新世代のアルバムだと思います。

2024-10-01

音楽好きが集まるお店

 

東京のイーストサイド、江東区の清澄白河にあるカフェ「ginger.tokyo」はポークジンジャーやバターチキンカレー、タコライスが美味しいお店でありますが、なんと7インチ盤を中心にアナログレコードも販売されています。

オーナーはとても親切な方で、もちろん音楽については詳しいどころじゃない。「note」への投稿を読んでみれば、その幅広さ奥深さにますます興味津々となっておりました。お店主催のイベントではたとえば「80年代特集」と題して、オーナーが映像とGoodサウンドでDJ。音楽好き仲間がワイワイ、僕も時間を忘れて楽しみました。

そしてなんと“ジンジャー”には、noteに投稿する音楽好きツワモノたちが集まっているとお聞きしてお店に行ってみると、まあ皆さんオープンでフランクで、ほんとに音楽が好きでたまらない方々で、こっちが嬉しくなってしまいました。仲間に入れていただき、いまや月イチ定例になるくらい楽しみなオフ会になりました。

ここで知り合ったnote仲間の方々の投稿を読んでは聴いて、CD棚の前に立って、サブスクでもDigって。いままで聴いていなかった音楽や知っているけれどちゃんと聴いていない曲を聴く機会が増えました。お店でアナログレコードの音の良さも再発見したりして、レコードプレイヤーを検索してしまうというのもあります...。

2024-09-27

50 / Herb Alpert

 

Herb Alpert(ハーブ・アルパート)はアメリカのトランペッター&音楽プロデューサー。御年89歳。A&Mレコード創業者で“A”は彼の名前から。“ヴォーカル曲とインストゥルメンタル曲の両方で、ビルボード誌全米シングル・チャートNo.1を獲得した唯一の人物”だそうです。2024年新作は通算50作目、奥様との結婚50年アニバーサリーでこの題名に。

僕の世代にとっては、なんといっても「オールナイトニッポン」のテーマ曲「Bittersweet Samba」の人です。新作を聴くと深めのエコーのトランペットが、やはりなんとも昭和郷愁を感じさせて、ほんわか&ウキウキします。この感じを出せるのは彼しかいないのではと思うとオリジナリティに満ちた人だなと感じます。

2.Sh-Boom はドゥーワップ・クラシックだそうですが、これまたラジオ番組が始まりそうです。すごくいい感じ。3.Are You Lonesome Tonight? はプレスリーの曲。泣かせます。これ聴いて夕日を見たらたまりません。4.Baubles, Bangles And Beads も有名曲とのことですが軽快で小躍りしたくなるアレンジ。一貫性がありながら、飽きることのない音作りで楽しませてくれるアルバムです。

2024-09-24

「趣味は?」って聞かないらしい

 

YouTubeで「【解説】驚きの報道!趣味「音楽鑑賞」が絶滅寸前!?」なるタイトルが目に入り見てしまいました。詳細はリンクから動画を見てていただくとして、女子高生の親として「言えているなぁ」と思う部分がありました。

若者(に限った話ではないかも)は「趣味は?」と聞かれて「音楽鑑賞」と答えない傾向であると。音楽を友達と話すことはない、年長者に「何聴いている?」と聞かれて答えると「なにそれ?」って言われたりして面倒くさい、サブスク有料は月1000円もかかると。コミュニケーションツールにならないし、コスパ悪い、んだそうです。

初対面で「趣味は?」と聞かれることもほとんどない世の中だそうですが、勝手に“こんな人”とイメージ付けされるリスクを嫌がるのかもしれません。「そんなの聴いているの?」はNGワードです。これもコスパにつながる話ですが。

一方で、「特定のアーティストは聴く」んです。つまり“推し”ですね。それを積極的に人に言うかというとそうでもない。これは個人的意見ですが、そのアーティストのライヴに行くとファンだけが集まるので、大袈裟に言うと価値観が合った人と会えてうれしい、的なことはあるのかなと思います。

娘の話から友達と音楽の話で盛り上がった話は聞いたことないですし、自分がイヤホンで聴いている音楽を人に話したような感じはありません。たぶん趣味は?と聞かれて“音楽”とは言わないでしょう。かといって、オタクなほど探求しているものはあるんです。でも友達に言うわけではない。

若者の全員が全員そういうわけではないですし、音楽ビジネス市場規模は伸びているのだからこれでいいのではとも思います。娘の世代がどんな傾向にあるのかは知ったうえで、オジサンの考えを若者に押し付けることなく、僕は僕で我が道を行く、というのが答えのようです。


2024-09-20

Alone / Wayne Escoffery

 

Wayne Escoffery(ウェイン・エスコフェリー)の2024年新作も、SMOKE Sessionsから。僕のブログでは2度目の登場です。ニューヨークのテナーサックス奏者。ジェラルド・クレイトンP、ロン・カーターB、カール・アレンDrのワンホーンカルテットです。なんでも休暇中に指を骨折したりして孤独な時間を過ごしているうちに構想したアルバムだそうです。

夜にひとりで聴くにふさわしい、内省的で哀愁ただようサックスです。手数も少なめで音色がしっかりと伝わってきます。個人的にはデクスター・ゴードン(僕が所有している数枚のアルバムは2曲目がいつもバラード)を思わせるバラード集です。

1.Moments with You 1曲目からソファに身を預けてゆったりモードです。あぁいい時間が始まったなと。ピアノの音の美しさが光る4.The Ice Queen はウェインの個性的なオリジナル。心の移り変わりを味わいます。映画「いそしぎ」の5.The Shadow of Your Smile も深いアレンジ。ゆっくりと語りかけるようなサックスに酔いしれます。SMOKEの高音質録音をハイレゾで堪能できます。

2024-09-17

「ローレル・キャニオン」を観て

 

Amazonプライムビデオで「ローレル・キャニオン 夢のウェストコースト・ロック」を観ました。ほかにもクロスビー、スティルス、ナッシュ(&ヤング)やリンダ・ロンシュタットのドキュメンタリーも観ました。ママス&パパス、バッファロー・スプリングフィールド、ザ・バーズ、ザ・ドアーズ、ジョニ・ミッチェル、ジャクソン・ブラウン、イーグルスといったアメリカンフォーク〜ロックの面々が登場。

僕は80年代が高校大学でしたから、当時ここらへんはほとんど聴いていませんでした。ヒッピーとかサイケとか言っても思い浮かぶのはジミヘンくらいで、聴くのはアメリカよりもイギリス方面ばかりだったと思います。

65年〜75年くらいの洋楽なので、10歳〜15歳くらい年上の先輩方は知っていて当然の音楽かもしれません。ところが僕自身1年前にボニー・レイットを気に入ってから周辺に興味が湧いたのでした。

ロサンゼルスのローレル・キャニオンという地域にミュージシャンたちが集まる自然発生的なコミュニティ。彼らの交流が新たな楽曲を生み、やがて大ヒットに。そして事件や精神的支柱だったママス〜のキャスの死などで終わっていく。

音楽が手元にあって、楽曲や歌声の良さを純粋に競っていた時代。CSNのハーモニーやジョニ・ミッチェルの歌声は宝石のようでもあります。そして同時にレコード会社の短期的収益やマーケティングの雲が覆い始めてきた頃なんだと思います。

ジミヘンといえばの、当時のモンタレーやウッドストックといったロックフェスで、大音量化〜スタジアムロック、ギターが延々とソロを弾くあたりで、やっと僕が聴いてきたものにつながります。イーグルスのライヴでステージからリンダ・ロンシュタットが去っていく姿が印象的でした。

“ホテル・カリフォルニア”の哀愁感もピンと来なかったくらい知らなかった時期ですが、少しわかったような気がしました。

2024-09-13

ELECTRIC RIDER / 馬場智章

 

馬場智章(ばばともあき)は日本のサックス奏者。バークリー音楽大学卒業後、ニューヨークを拠点に活動。2023年のアニメ映画「BLUE GIANT」で主人公のサックス演奏を担当していたので知っている人もいると思います。2024年本作は通算3作目で全曲オリジナルのメジャーデビュー作となります。

僕が好きなトランペット黒田卓也さんとのバンド“J-Squad”がカッコよかったこともあり注目していました。今回のアルバムもどこか通じるものがあると思いますが、キーボードのBIGYUKIさんとの共同プロデュースもあって、かなりエレクトリックに振っています。僕自身テクノやエレクトロミュージックをよく聴いていた時期があるので、こうしたサウンドに高揚するところがあります。

まずは象徴的な1.PRIME を聴いてみてください。ジャズというよりも「新しい音楽」の勢い満々です。2.Season of Harvest は黒田さんっぽさがあるファンキーな曲で好きな音です。4.Fade into you は馬場さんのサックスをじっくり堪能できるスローな曲。世界に向けたクオリティをもったミュージシャンが日本にもまだまだいるんだと感じさせてくれる作品です。

2024-09-10

MacのApple Music不具合

 

表題とは関係ないですがAppleの新製品発表がありました。AirPods関連で単体ハイレゾ対応とか予想していたのですが、ちょっとした機能向上やカラバリくらいで個人的には期待外れでした。

先週のある日、MacのApple Musicでバンド名を検索しようとしたら、いつもなら検索画面にいろんなジャンルの画像が表示されているのが、あれ?表示されていない...。バンド名を検索窓に入力しても結果が出てこない状態になりました。ちなみにこのMacは音楽専用機。極力ほかのアプリは使っていません。

「今すぐ聞く(ホーム)」、「見つける」や「ラジオ」のボタンを押しても、何も表示されない。なのにライブラリに入れた楽曲は普通に聴けます。クラウドとの接続は成立しているのでネットワークに問題なさそう。ちなみにiPhoneでのApple Musicアプリは問題なく動作しています。何度もGoogle検索して過去に同様の障害で多くの人が困っているのにどれも解決に至っていないようです。

Apple IDをサインアウト→サインイン、Macのログアウト→ログインもしたけれど回復しません。こりゃ、Macのアプリが壊れたかと思い切ってOSを再インストール。なのに問題解消せず。数時間かかって、もうあきらめ。今後はiPhoneで運用するしかないか、はぁ。

ところが2日ほど経って、Macを開けてみると、表示されているではないか。なんじゃと。原因わからずです。解決するには放置せよということなんでしょうか。Apple Musicあるあるなのかもしれません。

音楽再生もどんどんソフトウェア&クラウド頼りになっていくので、こうしたことには付き合っていくしかないのかもしれません。その点CDやレコードはシンプルでいいわ、と思ってしまいました。

2024-09-06

Let's Walk / Madeleine Peyroux

 

Madeleine Peyroux(マデリン・ペルー)はアメリカのシンガーソングライター。パリに移住してストリートミュージシャンをやっていたこともある。2024年本作は6年ぶりの10作目。ジャズをはじめ様々なジャンルの曲を彼女なりのアレンジで歌うことも多かったが、今回は全曲オリジナル。

これもジャズなのね、とノラ・ジョーンズのように言われそうですが、ルーツのひとつにジャズがあるということかな。様々な音楽から着想を得てアレンジしていくことで楽曲そのものの楽しさを味わうのがジャズとも思います。そして何より彼女の曲は楽しい。我が家でも妻に好評。自然と口ずさむような印象的な曲が詰まっています。

タイトル曲3.Let's Walk なんてまさにポップでおしゃれな曲。暑くなければ散歩したい。5.Blues for Heaven や9.Showman Dan のようなブルース曲が僕のお気に入りです。バックの演奏も小粋でしっかりした演奏。オルガンやギターの音もいい。ほかの楽曲も様々な音楽を知るベテランならではの深みを感じさせつつ、気軽に聴けるいいアルバムです。

2024-09-03

ジャズしか聴けなかった

 

最近、これ聴いています」で今年発表のジャズアルバムを紹介していたり、ジャズクラブを運営していたとかなると、さぞジャズどっぷり人なのではと思われます。実はそんなに詳しくない...。

同記事は“note.com”というサイトにも転載。清澄白河のカフェGinger.tokyoで、noteに投稿するくらい音楽めっちゃ詳しい方々とお会いすることができたのですが、そこで「ジャズ以外も聴くんですね」なんて言われたりして。

昔、よく聴いていました」も書いていたので、HR/HM出身なのはバレバレですし、我ながら雑食だなと思い返しました。そしてやっぱりギターを弾いていたことは聴く音楽にも大きく影響していると思いました。大学時代、曲を作るために、先輩の家でいろいろな音楽を聴いたのもきっかけになったかな。XTCとかヴェルヴェットとかP-Funkとか。

社会人になって、仕事がいろいろキツくなってきた30代後半くらいから、ジャズしか耳に入らなくなってきたというのが本音です。もしくはダンスミュージックかインスト。はっきりしたコード進行でなく明るくも暗くもない、気持ちがニュートラルになるような音楽しか聴けなくなりました。そうこうするうちにいつの間にかジャズどっぷり人になっていた気がします。

でもやっと解放されて、いまは再び何でも聴くようになりました。だから音楽好きな人と話しをするのは本当に楽しい。投稿を読むのも楽しい。歳をとるのも悪くないなと思っています。

2024-08-30

And Then Again / Bill Charlap Trio

 

Bill Charlap(ビル・チャーラップ)はアメリカのジャズピアニスト。2024年本作はピーター・ワシントンB、ケニー・ワシントンDrとのトリオで、ニューヨークのヴィレッジヴァンガードでのライヴをブルーノートからリリース。1997年から続くレギュラートリオとのことでベテランの味わい深い演奏を聴くことができます。

ビル・チャーラップの作品はいずれもオーディオ的に優れていて、特にピアノの音には惚れ惚れします。本作を一聴したとき「ん、ボリュームちょっと小さい?」と思いましたが、途中のドラムスの音はしっかり出ていて、ベースも豊かな低音が鳴っています。これ、小さな音はより繊細に、大きな音はより際立って、つまりダイナミクスが大きいんですね。だから音量上げ気味で聴くといいかも。臨場感もぐっと上がります。

いかにもケニー・バロンの作品だという1.And Then Again はこのトリオらしく途中からエネルギッシュな展開。ヴィレッジヴァンガードの空気が伝わってくるようです。3.'Round Midnight のアレンジも小粋で大人な雰囲気。ガーシュインの7.The Man I Love も軽快に楽しい演奏。おだやかな秋が恋しくなるアルバムです。

2024-08-27

リスニングポイントの話

 

スピーカーで音楽を聴くときに、どの位置で聴いていますか?僕は音をしっかり聴くときは、オーディオセオリーどおりに正三角形の頂点?で聴いています。つまり左右のスピーカーの距離と等距離の真ん中で、ソファから少し乗り出した状態。するとヴォーカルは眼の前の真ん中に定位して、左右や場合によっては前後にも音場が拡がるのを楽しんでいます。

ただ、ずっとその姿勢で聴いていると疲れちゃうので、結局ソファ背もたれに寄りかかる。そうすると正三角形ではなく、二等辺三角形の頂点になります。ちょっと音楽を俯瞰して全体でゆったり聴くことができる。で、おっこれ何、となると乗り出す。そんなことを繰り返しながら聴いています。

でもちょっと思うのは、正三角形で聴くのはなんとなくヘッドフォン的。いろんな音を聴き逃すまいと聴くようなところがある気がしています。スタジオのコンソールの前みたいな。スピーカーは耳だけでなく体でも聴いているのが心地いいので、まあ違うわけですが。たまに、いろんなところに座ってスピーカーから鳴っている音を聴くのもよかったりします。

2024-08-23

Trio II: 2 / Marty Holoubek

 

Marty Holoubek(マーティ・ホロベック)はオーストラリア出身の東京在住のベーシスト&作曲家。NHK『ムジカ・ピッコリーノ』にレギュラーとして出演したりして多方面で活躍しています。そんな彼が信頼するミュージシャン、井上銘G、石若駿Drと組んだトリオ“Trio II”の2024年2作目。

僕もジャズクラブをやっていた頃に多数出演いただいた若手ジャズギタリストNo.1の井上銘さん。同じく若手ドラマーとして突出して活躍されている石若駿さん。このトリオでの演奏は数多のセッションで鍛え上げられた演奏能力と“日本の”では済まない世界に通じるオリジナリティサウンドを持った、まさに“今”の音楽が表現されています。

それにしてもスゴい演奏の7曲37分です。2.Uncle Izu を聴けば彼らがジャズにとどまらず、あらゆる音楽を吸収して演奏していることがわかるでしょう。井上銘さんのギターサウンド、刺激的でカッコいい。個人的にThe Durutti Columnを思い出した4.Maritta のギターも好き。6.Beki のリズム...こんなの石若駿さんしか叩けないでしょう。ドラムス炸裂していてスゴいです。マーティさん起点だからこそ生まれた傑作に感謝。

2024-08-20

「ストレンジャー・シングス」を観た

 

Netflixでドラマ「ストレンジャー・シングス」をシーズン4までハイペースで観ました。外はとにかく暑いのでエアコンの効いた部屋で、ネット動画配信はうってつけです。時間があるからもう1話観ちゃおうか、となるのがドラマの罠です。

アメリカのSFホラーで2016年に配信開始されたシリーズですが、1980年代の雰囲気プンプンでなかなか楽しいです。ショッピングモールやビデオレンタルショップもそうですが、なんと言ってもBGMに80年代ヒット曲やハードロックがかかって、ひとりノリノリになりました。

ラストには登場人物がギターを持ってメタリカ「Master of Puppets」を弾きますからオォーッて。映画全体を覆う雰囲気もどこかメタルチック。というかメタル愛、リスペクトを感じる作品だと思います。

完結すると言われているシーズン5も製作を開始しているそうなので、来年観られるかな。


2024-08-16

Epic Cool / Kirk Whalum

 

Kirk Whalum(カーク・ウェイラム)はアメリカのサックス奏者。今年6月にも「村上春樹 produce 村上JAM 〜フュージョンナイト」で来日されて、単独公演もされていたようです。ホイットニー・ヒューストン「オールウェイズ・ラヴ・ユー」でのサックスソロは誰もが耳にしたことのある名演奏だと思います。

2024年新作のこれぞスムースジャズまたはフュージョン。音質いいです。お気に入りのオーディオ&スピーカーでスカッと鳴らしてください。曲調も真夏にぴったりリゾート気分です。カークのサックスも歌うように奏でられて気持ちのよいこと。あーもうなにも考えなくていいやってなりますきっと。

1.Bah-De-Yah! から期待を裏切らないフュージョンぶり。リズムのツボをおさえたノリノリな曲で始まります。5.Through the Storm はその名の通りクワイエット・ストームな1曲でクールダウン。サックスが歌っています。8.MF はマーカス・フィニーのドラムスとおそらく息子のカイル・ウェイラムのリズム隊ビシバシのテクニック派大好き曲です。ハイレゾ24/96&Dolby Atmos対応音源です。

2024-08-13

夏だブルーラグーンだ

 

そろそろお盆だっていうのにこの暑さ。夕方たまーに風がちょっと涼しくなったかなと思う程度。毎年記録的暑さなんて言っているので来年はどうなることやら。こうなったら夏らしい音楽かけて脳内はサマーリゾートにしてやれって思います。体は冷房の部屋ですが...。

夏ミュージックって言っても人それぞれ。大学時代にゼミ仲間の車に乗るといつもザ・ビーチ・ボーイズがかかっていたのを思い出します。僕は1980年中学3年に聴いた高中正義「ブルー・ラグーン」が夏ミュージックの初めだったような。ウキウキラテン調で青い空青い海の開放的な気分満開です。

当時はジャズなんてものは知りませんし、ギター雑誌くらいしか情報源がなく、高中難しくて弾けない、カシオペア別格という扱い。いわゆるフュージョンというのは大人っぽいイメージの音楽でした。熱心に聴くのはハードロック、休憩に流すのはフュージョンという学生時代だったかな。

夏になるとひとりフュージョン大会します。カシオペア、スクエアから始め洋楽クロスオーバー系へ。ちょっと横道してR&Bクワイエット・ストーム系に行ったり。アイスコーヒーでも、ちょっとお酒でも用意してリゾート気分、夏満喫です。

2024-08-09

Phoenix Reimagined / Lakecia Benjamin

 

先日とあるジャズ好きの方から「ライヴ盤出ていますよ」と言われて知ったLakecia Benjamin(レイクシアorラケシア・ベンジャミン、Sax)の2024年リリース作。前作の収録曲を中心に、ブルックリンのザ・バンカーというスタジオでのライヴを録音したものです。

スゴい熱量の演奏です。圧倒的な前作をさらにパワーアップさせたようなこれぞジャズライヴ!な音を聴かせてくれます。影響を受けたというジョン・コルトレーンの魂を受け継いで、そのまま今のサウンドに昇華させてみせた貫禄の演奏。ジャズライヴの今を聴くのであれば、このアルバムとUlysses Owens Jr.の「A New Beat」は絶賛オススメです。

目玉はタイトル曲の3.Phoenix Reimagined でしょう。メンバーにランディー・ブレッカーTp、ジェフ・テイン・ワッツDr、ジョン・スコフィールドGが参加しています。勢いもあって太い。圧倒されます。コルトレーンな2.Trane もこれぞ彼女のサックスが堪能できます。もうひとつコルトレーンといえばの10.My Favorite Things を聴けば、彼女が奏法を真似ているのではなく、巨匠の意志を継いでいることが感じられると思います。

2024-08-06

瞑想のための音楽

 

ロバート・グラスパーが「Let Go」という瞑想的なアルバムを2024年今年リリース(Apple Musicとのパートナーシップ制作)していました。いつものグラスパーではないですが、気持ちが落ち着く作品です。音楽には精神安定効果があると思っていますし、TPOによって効き目のある音楽は違うと思います。

数年前から、デスクワークするときにチルアウトやLo-Fi、“集中したいとき”といったプレイリストをかけっぱなしにして作業していました。深い呼吸とからだの点検の瞑想もたまに。瞑想という建前の昼寝だったりしますが...。瞑想のための音楽も好きなほうです。

一方で、本当に集中したいときは音楽を流さず、ヘッドフォンやイヤフォンも外して生活音だけにします。受験勉強中の娘も、集中したいときは耳に何か入っている状態が嫌だと。あと、風邪などで寝込んでいるときもダメですね。音楽は元気じゃないと聴けない。

プレイリストでなく、“こういうときはこの曲”というのをいくつか持っていると、自分の気持ちをうまくコントロールできるのかもしれません。客観的になることができるという技かな。僕自身そういう曲は少なく、まだまだだなって思います。

2024-08-02

MoonDial / Pat Metheny

 

数ヶ月前から配信で小出しになっていたPat Metheny(パット・メセニー)の2024年新作が全曲揃いました。昨年の「Dream Box」同様ギター・ソロ作品。得意のバリトン・ギター(普通のギターよりもネックが長く、より低音が出る。主にカントリーやメタルで使用)に特注のナイロン弦を張ってみたら、興奮するほど素晴らしい音が出たという1枚でしょう。なるほど今までの弦とは違うタッチと音でした。

聴けばびっくりするほどの低音です。オーバーダビング無しとのことで、ベースをかぶせたわけではありません。いままでのアルバムにもバリトン・ギターは使用していたので予想はしていたのですが、上回る音域です。チューニングに工夫があるのかもしれません。いつものようにパット・メセニーの世界が美しいメロディとともに繰り広げられています。

秀逸なカヴァー作品が並んでいますが、ここではオリジナル作品からオススメを。1.MoonDial  の低音に驚いていただいて。こうして和音やベース音を弾きながらメロディーを紡いでいくジャズギターの弾き方ですが、とてもじゃぁないが難しくてできません。メセニーのそれはコードチェンジも頻繁で大変。こんなにも優しくて美しい曲なので困難さを感じさせないところがメセニーです。6.Falcon Love のようなメロディーもメセニーらしい。うるうるします。The Unity Sessionsでの9.This Belongs to You をソロで聴けるのはうれしい。ちなみに空間オーディオ(Dolby Atmos)でも堪能できますのでお試しあれ。

2024-07-30

オーディオ展示会に行ってきた

 

6月にOTOTEN、7月にインターナショナルオーディオショウに行ってきました。量販店でさえオーディオ売り場が縮小していく時代に、果たして“オーディオ”がどれほど一般的なものなのか疑問でありますが、こうした展示会に行くと来客の意外な多さに驚き、関わっている業界の方々の懸命さに少し嬉しくなったりします。

やっぱり来客は僕のようなオジサンが多いですね。70年代80年代のオーディオ最盛期に夢中になった世代ということでしょう。しかしあと10年もすると...。若い世代にとってどうなんでしょう。オーディオってヘッドフォンやイヤフォンで聴くこと?Bluetoothスピーカー?という感じかな。そうなるとスピーカーの前でじっくり聴くスタイルはニッチなのかもしれないと思ったりします。

ニッチで何が悪いとばかりに、高級機のデモを聴きます。きちんと調整された環境で聴く高級機の音は、余裕があって、眼の前にあらゆる音が鮮明に表現されて、素直に「あぁ音楽っていいなぁ」と思わせる揺るがないチカラを感じます。家を買うよりは安いし、高級車を買うくらいのつもりでこの音が手に入るなら、という値段です...。夢があるのはいいことですよね。

OTOTEN 2024
インターナショナルオーディオショウ 2024



2024-07-26

Evergreen / Julius Rodriguez

 

Julius Rodriguez(ジュリアス・ロドリゲス)はアメリカのマルチ奏者&作曲家です。ドラマーとしても活動しているそうですが、この2024年作でも鍵盤、ギター、ベース、ドラムス、プログラミングなどなんでも一人で演奏しています。ジャズのみならず、ヒップホップ、テクノなどジャンルを超越して彼の音世界を展開しています。現在25歳とのことで、若くて凄い才能です。

サウンドデザインのことを書きましたが、その視点で聴いても面白いです。モノラルのように中央に音を集めておいて一気に左右に空間を拡げたり、細かく音を移動(パン)させたり、後方で街の雑踏を混ぜたりというように、白黒から極彩色まで使い分けて、曲そのもののイメージを伝えています。もちろん演奏技術や曲の進行も秀逸なのですが、それもあくまでパーツであるというような位置づけ。

2.Funmi’s Groove を聴けばその極彩色ぶりがわかると思います。曲としても印象に残る7.Run To It (The CP Song) はミッシェル・ンデゲオチェロと共作とのことで、ポップ性が光る作品。キーヨン・ハロルドTpが参加している8.Love Everlasting も気持ちのよい曲でサウンドデザインが効いています。Apple Musicでは空間オーディオ(Dolby Atmos)で聴くことができます。スピーカーでサラウンドもお持ちであればぜひ。

2024-07-23

サウンドデザインについて

 

僕が80年代のヒット曲を聴いていたりすると、家族に「いかにも昔の音って感じ」と言われてしまいます。この頃の音楽制作では、デジタルによる機材の進歩が始まり、かなりの創意工夫で現場は苦労が多かったと思います。DTMソフトの操作性はもちろん、CPUもメモリもハードディスクも限界が低くてバグやクラッシュで大変だっただろうなと。それでもマイケル・ジャクソンやプリンスの音を聴くと時代を超えたチカラを感じる音を出していて、スゴいなと思います。

それが2010年代にもなるとデジタル技術は進化して、アメリカのアーティストを筆頭に革新的な音作りになっていきます。特にサウンドデザインといわれる音像や音場、倍音や位相、エコーの処理など細部にわたってコントロールできるようになって、キャンパスに絵を描くように音作りされています。オーディオ的にはイヤフォンやヘッドフォンで聴くリスナーが多くなって、耳の中に拡がる空間表現を楽しむようになったことも関係していると思います。

例えば、個人的な印象になりますが、ハイハットやアコギなどの高域成分は左右に思い切り振って、ベースのような中低域は真ん中よりちょっと下に厚めにノリよく。超低域から高域はシンセで広大な空間を意識させて。ヴォーカルやコーラスがひきたつように全体をバランス調整している。昔のようにライヴでの演奏位置に配置するだけではない印象です。

20年代の今はさらにDTMや音作りのソフト技術が進化して、ハイレゾでキャンパスが最大限に広くなり、空間オーディオによって音像をさらに細かく位置づけできるようになって、サウンドデザインは驚くほどクオリティの高い楽曲が増えていると思います。

リスナーのリスニング環境も多様化しているので、音楽制作の現場もいろいろやることが多くて大変だろうなと推測します。ソフトの進化やAIによる工数削減はあるものの、作詞や作曲だけでなく、サウンドデザインをどうするかについてもクリエイティビティが問われる時代になっていると思います。

2024-07-19

A Duo / Matt Holborn & Kourosh Kanani

 

Matt Holborn(マット・ホルボーン)はイギリス、ロンドンを拠点にしているヴァイオリニスト。Kourosh Kanani(コロシュ・カナニ)もロンドンで活躍するギタリスト。10年以上一緒に演奏してきたという彼らは、ジャズやロックをはじめペルシャ音楽やインド古典音楽など様々な要素をバックグラウンドにして即興演奏の活動をしているそうです。

2024年に配信開始した本アルバムは一聴してあのジャンゴ・ラインハルトGとステファン・グラッペリVnの演奏を思わせる音楽です。マヌーシュ(フランスやベルギーで生活するロマ民族、ジプシーといわれる)ジャズとしてジャンゴをはじめ独特なスタイルですが、遠く日本の僕たちにもなぜか耳馴染みのよいサウンドだと思います。

ジャズスタンダードの3.You and the Night and the Music や5.Someday My Prince Will Come 、8.I Fall In Love Too Easily の彼ららしいアレンジや即興演奏は新鮮な印象です。とりわけオリヴァー・ネルソンの6.Butch and Butch は最近ブルース耳になっている僕に響きました。アコースティックでさわやかで湿気の少ないサウンドで部屋を満たせば、異国にいるかのよう。暑い夏にオススメです。

2024-07-16

今のギターはこれだ!“キングフィッシュ”

 

久々にギターに手を伸ばしたくなった(実際にしばらく弾いた)音源&映像をYouTubeで知りました。Christone "Kingfish" Ingram(クリストーン・“キングフィッシュ”・イングラム)、1999年生まれ25歳。アメリカ、ミシシッピ州出身のブルースギタリスト&シンガー。グラミー賞をはじめ数々の受賞歴ありと。

Fender Signature Sessions

まずは弾きまくるときのギター音が好み。このくらい歪ませて、伸びがあって、ネバりがあって、フレーズもいやはやカッコいい。ビデオを観ているとあまり指板は見ない。曲の変わり目くらい。次の展開のときにドラムスにチラッと顔を向けるのがいい。で、クリーントーンやちょい歪みの音もいい。もちろん歌もハートフルさが伝わってくる。

大好物なスティーヴィー・レイ・ヴォーンやジョン・メイヤーはもちろん、ゲイリー・ムーア(ブルース期)やハイラム・ブロック、やっぱりB.B.キングも想い起こしました。キングフィッシュのギター音は僕が出したい音に近いかもしれない。気持ちよ〜く聴いています。今年2024年発表のライヴ音源もすごくよかったのでオススメ。

2024-07-12

Wild Is Love / Naama

 

Naama(ナーマ、Naama Gheber)はイスラエル出身、ニューヨークで活躍するジャズシンガー。2012年にはテルアビブでジャズの声楽を学び2015年に奨学金を得てニューヨークへ。ライヴ経験を積んで、2024年本作は4作目のリリースとなっています。今回は名手ピーター・バーンスタインGを迎えての作品です。

世の中キレッキレの曲が多くそれもいいんですが、たまにはこうしてリラックスムードで音楽に浸りたくなります。正統派で歌い上げ過ぎず、ときに語りかけるようで、粋なスキャットも聴かせてくれます。ギターやバックの演奏もあくまでナーマの歌唱を支える優しい演奏。ジャズクラブでその場に居合わせたら「ん〜いい」となるでしょう。

ここはピーターのギターとの共演曲をオススメします。2.Who Am I の気だるさもいい感じです。5.From This Moment On のスイングもノリよくカッコいい。ナーマの実力を知る6.I'm Glad There Is You はデュエットで落ち着いた曲。どれも2分〜4分程度の作品なので無理なく、しかもハイレゾで楽しめるアルバムです。

2024-07-09

ジャズ・ロックその3

 

前回、ジャズ・ロックへの扉をジェフ・ベックが開いてくれたことを書きましたが、もうひとりいます。エドワード・ヴァン・ヘイレン(エディ)です。「僕が両手で押さえることを、彼は片手でやってしまう」的なことを言わしめたスーパーギタリスト、アラン・ホールズワースを世界中に紹介してくれたのです。ギター雑誌でも盛んに取り上げられていたのがアルバム「Road Games」でした。

フレーズが特異すぎて何を弾いているのかわからないけれど、ものすごく速くて滑らか。のちのちエディが影響を受けていることがわかってきました。僕もすっかりはまって彼のアルバムを全部手に入れてしまいました。

エディからはもうひとつ。インタビューで「最近何か他人の曲を聴いたか」との問いに「ブランドXがすごかった」的に答えていました。調べるとフィル・コリンズがドラムスとして在籍した時期もあるバンドでした。ポップ期のジェネシスや“恋はあせらず”のイメージからはかけ離れた凄腕ドラミングぶり。レコード屋に行ってブランドXの輸入盤LPを探して集めたのが懐かしい。

ここでもジョン・グッドソールGがこれまた凄腕ですが、気に入ったのはパーシー・ジョーンズのベースでした。当時も今もフレットレスベースの音が大好きで彼のフレーズは本当にカッコいい。

ジャズ・ロックはギタリストが凄いことはもちろん、ベーシストやドラマーがこれまたとんでもない演奏力であったことがギター少年には多いに響いたのです。アラン・ホールズワース関連を集めれば、トニー・ウィリアムスDrやビル・ブルーフォードDrのアルバムにも行き着いて、ジャズやプログレにつながっていったというわけです。

2024-07-05

Soul Jazz (feat.Vincent Herring) / Something Else!

 

アメリカのアルトサックス奏者、Vincent Herring(ヴィンセント・ハーリング)によるプロジェクト“Something Else!”の2024年デビュー作。僕の大好きなSMOKE Sessionsからのリリースで今回も熱い演奏を届けてくれました。メンバーにはウェイン・エスコフェリーTSをはじめジェレミー・ペルトTP、ポール・ボレンバックG、デヴィッド・キコスキーP、エシエット・エシエットB、オーティス・ブラウン三世Drという名手たちの共演となっています。

アート・ブレイキーやホレス・シルヴァーたちのハードバップ〜ファンキージャズは、さあ今日もがんばって仕事しましょ、ってときの音楽にぴったりで、元気が出るし緊張を和らげて余裕も生まれるというプレイリストに欠かせない存在です。もちろん仕事が終わったあとの“ぷはーっ”にも最適。ほぐされます。今作はいいとこ取りで、録音も選曲、選フレーズも最高の一枚となっています。

1.Filthy McNasty で気持ちをアゲていきましょう。各パートのソロも短めに小気味よく進んでいきます。なかには4.The Chicken なんてファンク定番曲やハービーの5.Driftin' も。いぇー!ってなりますね。6.Slow Drag なんて絶妙な気怠さで、さすがベテランの演奏。おなじみコルトレーンの8.Naima ではソウルフルなベースラインで気持ちよいアレンジ。ギターの音もいい。思わず体が動いてしまうそんな“ソウルジャズ”アルバムです。

2024-07-02

ジャズ・ロックその2

 

僕のようなギター少年にとってジェフ・ベックは特別な存在でした。ギター雑誌では「Blow by Blow」(1975年、邦題:ギター殺人者の凱旋)の“Scatterbrain”や“Cause We've Ended as Lovers”(邦題:哀しみの恋人達)のTAB譜が載っていて、エレキギターのあらゆるテクニックが盛り込まれているから、ぜひ弾いてみよと。しかし一聴して「無理」と思い、まずはスモーク・オン・ザ・ウォーターを練習することにしたのでした。

たぶん「Blow by Blow」にジャズっぽさを感じていたんだと思います。これはコード進行が容易ではないんだと。そしてジャズ・ロックを感じることになったのは、「Wired」(1976年)そして「There and Back」(1980年)を聴いてからでした。

特にキーボードを弾くヤン・ハマーがギターのようなフレーズをビシバシと掛けてきて、ジェフも凄いフレーズで呼応するという丁々発止のやりとり。痺れました。これがジャズかと。聞けばヤン・ハマーはマハヴィシュヌ・オーケストラ出身だと。

ジョン・マクラフリンG率いるマハヴィシュヌ・オーケストラとチック・コリアP&Key率いるリターン・トゥ・フォーエヴァーが、僕が思っていたジャズ・ロックバンドでした。マクラフリンのギターはジェフをさらに高速にした演奏。リターン〜にはアル・ディ・メオラが在籍していた。ここで原体験とつながったのでした。そしてマクラフリンもチックもジャズの帝王マイルス・デイヴィスのところにいたのだと。マイルス系譜恐るべし。

2024-06-28

Brasil / Lee Ritenour and Dave Grusin

 

ご存知かと思いますが念のため。Lee Ritenour(リー・リトナー)はアメリカのジャズギタリスト。Dave Grusin(デイヴ・グルーシン)はアメリカのジャズピアニスト。古希と卒寿というレジェンドたちは1985年に「ハーレクイン」で二人名義のアルバムを発表しています。

2024年の本作にもブラジルのシンガー・ソングライター、イヴァン・リンスが参加しています。彼の1988年作「LOVE DANCE」が大好きでよく聴きました。広く澄みわたるような歌声とブラジル音楽のコード進行、ポルトガル語のニュアンスが今でも新鮮に響きます。本作4.Vitoriosa でも健在で嬉しくなりました。

サンパウロの女性ヴォーカリスト、タチアナ・パーハが歌う1.Cravo e Canela や2.For the Palms でも聴けるハーモニカが郷愁なナンバーで気持ちよしです。6.Stone Flower では熱の入ったサンバ演奏とオーディオ好きも裏切らない高音質ぶり。これからの季節に部屋を爽やかで涼やかな音で満たしてくれます。


2024-06-25

ジャズ・ロック原体験

 

スペース・サーカスを聴いて、ジャズ・ロック熱が再燃しています。“Space Circus”という曲があるリターン・トゥ・フォーエヴァーを聴き出したらあれもこれもになってしまいました。

そもそもジャズ・ロックという言い方をするのかわかりませんが、僕にとってはインストで技量に優れたミュージシャンによる演奏と複雑な展開のハードな楽曲を指しています。プログレとかフュージョンとかとも被りますね。エレキギターを熱心に弾いていた学生時代に好んで聴きました。

高校生の頃ラジオで、ハードロック特集だったのに、アル・ディ・メオラの“Race With Devil On Spanish Highway”(邦題:スペイン高速悪魔との死闘)がかかったのが初体験の記憶。超絶ユニゾンに痺れました。



大学時代では、先輩方とのバンドでライヴ演奏した(挑戦した)のがゲイリー・ムーアG擁するコロシアムIIで“The Inquisition”。キーボードの先輩がプログレマニアで推薦してきたわけですが、難しくて途中挫折しそうになりました。ジョン・ハイズマンのドラムスもエラいこっちゃです。



これが僕のジャズ・ロック原体験です。世の中にはこんなに凄い演奏をする人が存在しているんだと驚いたわけです。わが家のCD棚にも象徴的な盤が多くあるので、次々にひっぱり出して聴いています。

2024-06-21

Aberdeen Blues / Luke Sellick & Andrew Renfroe

 

Luke Sellick(ルーク・セリック)はカナダのジャズベーシスト。Andrew Renfroe(アンドリュー・レンフロー)はアメリカのジャズギタリスト。ふたりともニューヨークはジュリアード音楽院にて学び、多くのサイドマン実績を持つ若手ミュージシャンです。ふたりはこの2024年の作品以外にもいくつかアルバムやシングルを発表していて、彼らの音楽が支持されていることを示しています。

デュエット好きの僕としては見逃せない作品でした。静かで和やかな雰囲気ながらも、選曲や音色に特徴があって彼らの世界に惹き込まれました。アンドリューのギターの音色はタイトルにBluesとあったりして、古くからのブルースギタリストやジャンゴ・ラインハルト、ジョー・パスなどを連想させるものがあります。そして心地よい歪み感。フリーズペダルという鳴らした音を伸ばしたままにして、音を重ねていく奏法が印象的です。

マーヴィン・ゲイ&タミー・テレルで有名な2.Ain't No Mountain High Enough やカーペンターズのカヴァーで有名な3.We've Only Just Begun のアレンジがなんとも心地よく耳に残ります。アンドリューのギターサウンドを堪能できる5.Northwest Passage はお気に入りの1曲です。外の雨音とともに部屋でゆっくり聴きたい音楽です。

2024-06-18

「スペース・サーカス」が配信に!

 

先日、ひとり盛り上がる事件がありました。なんとApple Musicのおすすめにスペース・サーカスの2枚目「FANTASTIC ARRIVAL」(1979年作)が表示されているではないですか。見れば2023年に配信開始されていた...。一言、もの凄い演奏です。再発されていた中古CDをウイッシュリストに入れて数十ヶ月。5千円くらいの値付けに躊躇していた音源です。

スペース・サーカス。“四人囃子、プリズムと並び、70年代プログレシーンを代表する異端派プログレッシヴ・ジャズ・ロックバンド”(ディスクユニオンより)とありますが、僕にとってはあの岡野ハジメさんのバンドです。岡野さんがベースを弾くPINKを聴きまくっていた大学時代。同じ大学の大先輩にあたります。DEAD ENDやL'Arc〜en〜Cielのプロデューサーでもあられます。

大学に入って何に一番驚いたかといいますと、先輩方の演奏のスゴいことでした。機材もさることながら、演奏力というか出し音が「もうこれプロなんですよね」というレベル。岡野さんのいらした時代から伝統的な文化だったのでしょうか。あーこれは追いつけないやと心の中で思っていました。

結局1枚目の「FUNKY CARAVAN」(1978年作)は中古CDを注文しました。ボーナス・トラックに“Live(at 明治学院大学431番教室 1976.11.1)”が入っているCDです。YouTubeにも音源があったので聴きましたが衝撃的な20歳の演奏です。あの大学時代に聴いたような音でした。
※1枚目はAmazon MusicやYouTube Musicでは配信されているようですが、Apple MusicやSpotifyには無い。なぜ...?

2024-06-14

Timing Is Everything / Eric Alexander

 

Eric Alexander(エリック・アレキサンダー)はアメリカのジャズサックス奏者。これまでにもOne For AllXaver Hellmeierのアルバムで紹介しました。55歳ながら多数のディスコグラフィーをもつベテランであり、名手として常連といえます。ニューヨークではスモールズあたりに出演されていてライヴも観ることができるなんて羨ましい。

彼のカルテット「My Favorite Things」(2007年)は一時ジャズ誌でも話題になりCDを購入しました。豪快なサックスがスピーカーから飛んできて、思わずボリュームを下げるほど。いやしかし元に戻して、存分にサックスを浴びるのが彼の作品の聴き方です。一度これを聴いてしまうと“ジャズを浴びてスッキリしたい”というときの定番になることでしょう。

軽快なシンバルワークの1.After the Rain を聴いて蒸し暑い季節の鬱陶しさも軽快に。印象に残るフレーズを連発する4.Big G’s Monk も聴いていて楽しくなります。6.Misty でのバラードもエリックの得意技でうっとり聴かせます。ハイレゾで音質面も余すところなく、これぞサックス・カルテットを味わうことができます。

2024-06-11

「ボン・ジョヴィ」観ました

 

ドキュメンタリー「ボン・ジョヴィ:Thank You, Goodnight」を観ました。1時間以上の番組を4本立て。ジョン・ボン・ジョヴィは現在62歳。デビュー前から現在に至るまでの彼とバンドの歴史をたっぷりと観ることができました。

大学1年で“SUPER ROCK '84 IN JAPAN”に行ってデビューした頃のボン・ジョヴィを観たことはいまだに記憶に残っています。「夜明けのランナウェイ」ですね。MTVと同時に育ったロックバンドというイメージで、僕は就職してまもなく日本での衛星放送MTVの立ち上げに関わったので同世代感があります。このドキュメンタリーの前半でも多くのシーンが。

2022年にバンド仲間とのライヴでラストに「It's My Life」を演奏しました。実はあまり彼らの曲を熱心に聴いてこなかった僕ですが、演奏していて一番良かったのはこの曲でした。良いときも悪いときもいろいろあってこれからもどうなるかわからないけれど、今があるという思いを感じさせてくれました。

還暦なジョンは喉を手術して、声が思うように出なくて落ち込んだり。僕も目歯耳足と故障が相次いで、急速に老いを実感したこの数年。でも音楽が好きな気持ちは変わらないかなと。6月7日に彼らのニューアルバム「フォーエヴァー」がリリースされたばかり。同世代からエールを送られました。

2024-06-07

Seems / Kelly Green

 

Kelly Green(ケリー・グリーン)はニューヨーク在住のピアニスト&ヴォーカリスト。プロのベーシストである父親とともにジャズを学び、数々の演奏歴、受賞歴がある秀でたミュージシャンであるようです。分断された世の中への問題意識から音楽表現によって特に女性としての意思を伝えていこうというビジョンをもった方でもあります。

このアルバムでもヴォーカル曲、インストゥルメンタル曲、あるときは伝統的、そして現代的、テーマと即興というように様々なスタイルを際立たせて聴かせてくれます。そこにあるのは確かな演奏力と自由で前向きさが感じられる全体感。聴いていて楽しくなるはずです。

フルートと印象的なテーマで始まる1.Down That Road でオリジナリティ性の高いジャズグループかと思いきや、2.World of My Own でなんとも魅力的な女性ヴォーカルを聴かせ、3.Lonely One では日本の尺八を思わせる現代音楽アプローチからの自由なヴォーカル。そして4.Street Cleaning は一筋縄ではいかないバンドアンサンブル。多様ではありますが、彼女の思いを感じることができる演奏がこのあとも続きます。こういう作品があるからジャズは面白いと思うんです。

2024-06-04

「ボブ・マーリー」観ました

 

映画「ボブ・マーリー:ONE LOVE」を観て来ました。ボブ・マーリー関連の映像ソフトだけでもLD5枚、DVD2枚を持っているほど彼についてはある程度知っているので、へぇ〜という部分は少なかったのですが、俳優さんたちの演技が良かったのと映画館の音も迫力があって没頭して楽しめました。ただもうちょっと曲を聴きたかったかなぁ。

僕よりもかなり若い人でも「ボブ・マーリーは好きで聴きます」という知人はけっこういて、世代を超えた存在であることは確かだと思います。リズムやメロディーに優しさが溢れていて、人懐こいところが人気なのではないかと。(オススメ音源はこちら

僕はエリック・クラプトンの「アイ・ショット・ザ・シェリフ」のギターをコピーしたのがボブ・マーリーの音楽との出会いかな。その後彼の音楽やレゲエを聴き込むようになったのは80年代も後半になってからだと記憶しています。生き様やライヴ映像での鬼気迫る姿という意味では僕にとってジミ・ヘンドリックスと同様な存在。語り継がれてほしいミュージシャンのひとりです。

2024-05-31

Reverence / Charles McPherson

 

Charles McPherson(チャールズ・マクファーソン)はアメリカのジャズサックス奏者。1939年生まれで我が亡き母と同じ。現在84歳。あのチャールズ・ミンガスとも60〜70年代に共演しているそうです。この2024年新作は師匠のバリー・ハリスP(2021年逝去)への追悼と尊敬の意を込めたライヴアルバムです。

数多の巨匠たちと共演してきたチャールズはもちろんクインテットの演奏はジャズへの敬意や情熱をヒシヒシと感じることができ、ああなんて素晴らしい演奏なんだと思います。それを僕の好きなSMOKEのライヴ録音(客席の反応最高!)で聴かせてくれるのですからありがたやです。往年の熱いジャズを最新録音で聴くならこのアルバムです。どうやったらこんなに良い音で録音できるのだろう。

1.Surge からうれしい演奏を聴くことができます。テレル・スタッフォードのトランペットが気持ちよく飛んできます。続くチャールズのプレイものっけから年齢を感じさせないフレーズで応酬してくれます。ジェブ・パットンの素敵なピアノで始まるスタンダードの3.Come Rain or Come Shine ではチャールズが気持ちたっぷりにあの印象的なメロディを吹いています。バリーに捧げるラストの6.Ode to Barry は軽快でユニークなナンバー。師匠の印象を曲にしたのかもしれません。全編にわたってドラムスとベースの音も最高です。

2024-05-28

いい音紹介〜スティーヴ・スミス

 

Steve Smith(スティーヴ・スミス)と聞いてジャーニーのドラマーであることは知っている人も多いでしょう。「セパレイト・ウェイズ」「オープン・アームズ」といったヒット曲で誰もが耳にしているあのサウンドです。スタジアム級のハードロックバンドで曲に合ったドラミングを聴かせてくれるこれぞプロのプレイはミュージシャンにも人気です。

もともとジャズドラマーであることも知られていて、このヴァイタル・インフォメーションというプロジェクトに専念したくてジャーニーを辞めたそうです。で、このバンドのドラムスを聴いてびっくり。ジャーニーとは全然違う。インド?タブラ?的でとても個性的(たとえば3.Interwoven Rhythms-Synchronous )。ところがこれが癖になるサウンドなのです。これがやりたかったのかぁ。

そしてなんと言っても音が素晴らしい。ライヴ録音ということもあり、現場感がビシビシ伝わってきます。小さめのハコで演奏されるドラムスの音ってこうなんだよなーと思わせてくれます。様々なリズムでシンバルからタムまでくっきりはっきりです。そして強力なバスドラ!

僕は家のスピーカーをセッテングしているときにこのCDをずっと掛けっぱなしにして位置調整しています。ギターやベース、キーボードとのアンサンブルも生々しい音で、目の前に各楽器が気持ちよく再現できているかチェックしています。小さめの音でもしっかりスピーカーを鳴らしてくれるオススメ音源です。