2025-03-28

「この曲のドラムを聴け!」より(2)

 

前回の「この曲のドラムを聴け!」よりに続いて、今回はジャズ/フュージョン界を代表する名ドラマーをピックアップしました。

まずはハーヴィー・メイソン。これぞフュージョンなドラムサウンドです。ヘッドハンターズを経て様々なセッションに参加。日本ではカシオペアをプロデュースするなど、その影響は大きく、僕が当時聴いていたフュージョンドラムの音運びはまさに彼の影響下にあったのかもしれません。リー・リトナーの1977年初期作より。

続いてはデイヴ・ウェックル、といえばこのチック・コリア・エレクトリック・バンド。とても複雑で緻密なサウンドなのですが、大きなリズムを感じるドラマーです。YouTubeでいくつもの映像を観ることができますが、どうなっているのってくらいに難しいフレーズを叩きます。そしてロックの超絶ドラマーたちにも通じるものを感じます。

僕のイチオシは、デニス・チェンバース。ヒップホップ畑やPファンクのメンバー出身の彼はファンクドラマーと言えるかもしれません。音と音の間があまりにもカッコいい。その押し出しの強い音も大好きです。このジョン・スコフィールド・バンドのライヴは全般で“デニチェン”のドラムスを堪能できてオススメの一枚です。

2025-03-21

Fasten Up / Yellowjackets

 

Yellowjackets(イエロージャケッツ)はアメリカのジャズフュージョンバンド。1981年結成で2025年の本作は27作目のスタジオアルバムです。オリジナルメンバーのラッセル・フェランテKeyに加え、ボブ・ミンツァーSax、ウィリアム・ケネディDs、デーン・アルダーソンBが現在の布陣です。かつてはジャコ・パストリアスの息子フェリックス・パストリアスBやピーター・アースキンDs、ロベン・フォードGも参加していたことがありました。

大学時代(80年代)にフュージョンが流行していた頃、日本フュージョンは聴いたのですが海外モノはあまり聴かずに通り過ぎてしまいました。インストよりも歌モノのほうが語られることが多く、バックバンドとしての楽器演奏の上手さにスポットを当てていました。ここ数年はエレクトリック以降のジャズのかたちの一つとして、そして高音質楽曲が多いこともあって、海外フュージョンを遡って聴くようになりました。

スティーリー・ダンでもかけたかと思わせる1.Comin' Home Baby のグルーヴの気持ちいいこと。やっぱりリズム隊が気持ちいいんですね。2.Fasten Up ではこれぞフュージョンバンドというキレの良い演奏を聴かせてくれます。ラウル・ミドンVo&Gが参加する6.The Lion はブラジルテイストで気持ちよい曲に仕上がっています。ご自宅のオーディオやヘッドフォン、イヤフォンを快適かつ開放的に鳴らしてくれるハイレゾ音源をご堪能あれ。

2025-03-14

“断捨離”できたのか

 

今年はいくつか節目を迎えておりまして、家族全員で断捨離をまさに断行しております。僕の場合、衣服以外はほとんど音楽関連のソフトとハードウェア、書籍です。本や雑誌はわりと簡単に分別できて本棚に厳選しました。

大量なのはCDです。CDプレーヤーは活躍しているので、ほとんどそのままリビングの隅にドーンと残すことになりました。

DVD(ブルーレイ)ソフト、昔録画したディスクは使用頻度が少ないものの、DVDプレーヤーが稼働しているので、ソフトは押入れの高いところにまとめました。観ないものはブックオフです。

さて問題は、LD(レーザーディスク)やVHSです。

下段がLDプレーヤー、中断はVHSデッキ、上段はブルーレイレコーダー

上記機器を1年に1回くらい動作確認しています。でもいつ壊れるか不安...。プレーヤーが動くうちはソフトも取っておくことにしました。LDにしかない映像とか、どこにも売っていないVHSソフト(数本)は押入れの奥のほうに残しました。

昔はテレビ番組をDVD(ブルーレイ)に焼くとかして保存していましたが、もう今はそんなニーズはないようです。たまに録画してもハードディスクから持ち出さない前提の仕様になっています。つまり自宅のテレビで観るだけ。だからブルーレイレコーダーの出番もほとんどないと思っていますが、動作するので念のため機器を保管。

MD(ミニディスク)もハンディレコーダーがかろうじて動くので、バンドを録音したものなど数枚を残して押入れへ。赤ん坊だった娘を録ったminiDVが出てきましたが、たしかDVDに焼いておいたのと、ビデオカメラは動作しなかったので廃棄しました。

こうして書くと、あまり断捨離できていないかも。

いや実は大量に処分したのはケーブル類でした。スパゲッティのように絡まって溜まっていました。ほかにも昔の写真をひとつのアルバムにまとめたり、大量の書類を廃棄したら2段ほど押入れの棚が空きまして、家族にも喜ばれました。てなわけで今はちょっとした充実感に浸っております。

2025-03-07

Woven / Jeremy Pelt

 

Jeremy Pelt(ジェレミー・ペルト)はアメリカのジャズトランペット奏者。2025年本作は25作目になり、共演も豊富でラヴィ・コルトレーン、ロイ・ハーグローブのほか、以前紹介したHeavy Hittersの作品やヴィンセント・ハーリングのプロジェクトにも参加しています。今回はシンセサイザーサウンドを背景に取り入れた新しいテクスチャーながらも伝統的なジャズも感じさせる作品になっています。

ロバート・グラスパー以降、全く違和感を感じなくなったエレクトリックですが、マイルス・デイヴィスを語るときはアコースティック期とエレクトリック期できっちり分けられるくらい“別物”感がありました。僕はずっとエレクトリックが苦手で、聴くのはアコースティックばかりだったのですが、うまく調理してくれたハービー・ハンコックのヘッドハンターズあたりが再燃してから、再度エレクトリックを聴くと“嫌いじゃない”ことに気づいたりしました。

3.Afrofuturism はギターサウンドがいい音で乗っかってきて、後半からヴィブラフォンが酩酊するという僕好みの曲。4.13/14 では途中からアップテンポなスイングに浮遊感のあるジェレミーのトランペットが気持ちよく響きます。5.Dreamcatcher ではドラムスがビシバシソロを決めてこれまた気持ちいいサウンドを聴かせてくれます。全体的に優しいサウンドに身を委ねることができますが、よく聴くと緻密で先進的な音作りがなされていることがわかる作品になっています。

2025-02-28

「この曲のドラムを聴け!」より

 

年末年始あたりから“ドラム聴き”を続けていたところに、レコード・コレクターズ2月号の特集で「この曲のドラムを聴け!ジャズ/フュージョン編」ときて、拾い聴きしておりました。

マックス・ローチや昨年末亡くなったロイ・ヘインズあたりから探っていくのも楽しいのですが、今回はフュージョン寄りをピックアップ。


まずはスティーヴ・ガッド。チック・コリアの「Night Spite」(アルバム:The Leprechaun)での演奏です。一瞬リターン・トゥ・フォーエヴァーに在籍していたことがあるとは知りませんでした。スティーリー・ダンの「Aja」は何回聴いたかわからないですが、その数倍スゴいスティーヴ・ガッドが叩きまくっています。粒立ち、正確さはまさに彼のもの。こりゃスゴい。


お次はラス・カンケル。The Sectionの「Doing The Meatball」(アルバム名もThe Section)。スネアの音、気持ちいい。サックスはマイケル・ブレッカー。“キャラメル・ママの雛形”とコメントにありましたが、たしかにあの頃の日本ロックのリズムの感じさせる演奏。


ラストにマイク・クラーク。ハービー・ハンコック「Actual Proof」(アルバム:Thrust)をピックアップ。実はここらへんのヘッドハンターズ期がお気に入りでよくかけていました。“ポール・ジャクソンとの鉄壁のリズム隊”であり、ファンクとジャズを両立させた現代ドラマーに通じる演奏です。1974年ですからなんと50年前ですって。それにしても凄まじくカッコイイ演奏です。

2025-02-21

Apple Cores / James Brandon Lewis

 

James Brandon Lewis(ジェームス・ブランドン・ルイス)はアメリカの作曲家、サックス奏者です。1983年生まれ、2014年に初作を出してから2025年の本作は12作目にあたります。チャド・テイラーDs、ジョシュ・ワーナーB&Gとのトリオで“ヒップホップやファンクのリズムやテクスチャーを取り入れた”ジャズ作品になっています。

前回のスティングの投稿にも書きましたが、ジャンルを超えたミクスチャー感の中に一本筋が通っているのがジャズの真骨頂だと思っていまして、スティングの場合はそれがロック。今回のジェームスはソニー・ロリンズに代表されるモダンジャズへのリスペクトを感じます。ほかの二人が醸す音空間の中で、実に骨のあるサックスがガツンと響いて気持ちいいです。

ファンクドラムとぶっといベースから始まる1.Apple Cores #1 のセッションのなんとカッコイイこと。サックスがラッパーしています。3.Five Spots to Caravan はオーネットやドン・チェリーへのオマージュとなっていて、部屋全体にサウンドが拡がります。7.Broken Shadows はエレクトロダンスミュージックを生楽器でジャズしたような面白い楽曲だなと思います。それぞれが短い曲ながら、“これぞ今のジャズサックス”を聴くことができるオススメ作品です。

2025-02-14

ジャズを聴くようになったのは

 

メタル好きのギター学生だった僕が「ジャズを聴くようになったきっかけは?」とジンジャーnote仲間の方に聞かれて答えたのは「スティングなんです」。ポリスは当時バンドでもカヴァーするくらい好きだったので、スティングのソロ・プロジェクトもリアルタイムで聴きました。

特に84年のバンド結成ドキュメンタリー映画「BRING ON THE NIGHT, A BAND IS BORN(邦題ブルー・タートルの夢)」(85年作)が好きで何度も繰り返し観ました(レーザーディスクで)。

大学2年生ですからバンド活動は実はハードロック&メタル真っ最中。演奏力に憧れを持っていた時期なので、上記映画のミュージシャンの卓越ぶりに、ジャズミュージシャンてのはスゴいもんだと感服していました。

フランスはパリ郊外のお城を借り切って、スティングの作曲風景、ケニー・カークランドのクラシックピアノ練習、オマー・ハキムとスティングの3拍子裏リズム、爆音でのセッション、食事円卓でのダリル・ジョーンズとブランフォード・マルサリスの「ニューヨーク〜」、「I Burn For You」のドラムソロ、スティング夫妻と出産など、まだ栄光を勝ち取っていない出来立てほやほやのバンドの不安も描いて、そうかこれがジャズかと思った次第。

ジャズというのは、ロックもソウルもアフリカ音楽もラテン音楽もすべて飲みこんで、緩急自在&表情豊かで、なにより自由で、演奏そのものも楽しめる音楽なんだと教えてもらったわけです。

参加メンバーのアルバムを辿っていったらすぐにマイルス・デイヴィスに着いて、マイルス行ったらもうそこからぶぁっといきますね。