2025-08-22

The Big Room / Joe Farnsworth

 

Joe Farnsworth(ジョー・ファンスワース)DsのSMOKE Sessionsからの2025年新作。今回もニューヨーク布陣で、ジェレミー・ペルトTp、ジョエル・ロスVib、サラ・ハナハンAs(ユリシーズ・オーエンス・ジュニアDsの作品に参加)を迎えてのレコーディングとなっています。

僕のお気に入りであるSMOKE Sessionsの作品は、一聴オーソドックスで昔ながらのジャズを演っているようですが、聴き進むと「今」の音を感じることができます。もちろん50年代〜70年代往年のジャズ作品も力があって好きなのですが、ここで演奏する名うてのミュージシャンたちもそうした作品を聴いてきて積み重ねた経験があって、そんでもって「今」の空気を呼吸しながらライヴで表現していく新鮮さもその音から感じられます。

1.Continuance の勢いのある演奏からワクワクします。眼の前で聴いたら思わず歓声をあげてしまうでしょう。3.All Said and Done のブルースもゆったり身を任せて体を揺らして聴くと気持ち良しです。ジョーのドラムソロがめちゃカッコいい5.Radical はあのマイルス・クインテットを思わせる曲調。そして各メンバーのフレージングにキラッと光るものを感じるのが楽しいアルバムです。

2025-08-15

秋葉原と御茶ノ水

 

御徒町生まれ、湯島育ちの僕は、となり街に秋葉原と御茶ノ水があって、オーディオや楽器、レコード&CDに直接触れるのも自転車の距離でした。職住近接ならぬ“趣”住近接だったのです。70年代後半から80年代、ティーンエイジャーの頃の話です。

オーディオ製品がひしめいていた頃、FM誌やカタログで見た機種をさわって聴いてみたり、積み上げられた小型スピーカーの番号を押して鳴らし替えてみたり、高級オーディオコーナーには気後れして入れなかったり、店員さんの暇な時間を見計らって買いもしないのにセットを見積もってもらったり。石丸電気レコード館で小遣い内に厳選したレコードを買って特典ポスターの番号を伝えたり、生カセットテープの安売りセットを探したり、ラジ館の電気部品をわかりもしないのに覗いたり、というのが秋葉原の思い出。

バイトで貯めたお金で初めて買った中古のエレキギター。フェルナンデスのストラトモデルでイエローサンバーストを石橋楽器で。トレモロユニットを当時話題のフロイド・ローズに替えたくてコピーモデルを買って楽器屋さんに取り付けてもらったり、高校の同級生と御茶ノ水に集合しては楽器屋巡りして、試奏ばかりして買わなかったり。自分でギターを削って改造してどうにも調整できなくなってESPの店員さんに怒られたり。レンタルレコード「ジャニス」に通って手書きのユーザーレビューに教えてもらったり、というのが御茶ノ水の思い出。

僕の学生時代の音楽ライフはこのふたつの街に集約されています。御茶ノ水は半減した感がありますがいまでもギターショップが並んているし、ディスクユニオンが数店舗あったりして、今でも行くとちょっとワクワクします。秋葉原はもう僕が知っている街ではなくなってしまいました。父の初盆を迎え、母もいない湯島に行く用事がなくなり、行き帰りに立ち寄ることもなくなってしまったのがちょっと寂しい思いです。

2025-08-08

Eigengrau / Vincent Meissner Trio

 

Vincent Meissner(ヴィンセント・マイスナー)はドイツのジャズピアニスト&作曲家。なんと2000年生まれ。ライプツィヒの音楽大学で学びながら数々のタイトルを受賞。3枚目のリーダー作である2025年新作は、エスビョルン・スヴェンソン(E.S.T.)も属していたACT Musicからリリースしました。ヨーゼフ・ツァイメッツB、アンリ・ライヒマンDsとのトリオ作品です。

それにしてもこう暑くちゃ冷たいもんしか口に入りません。音楽を聴こうってなってもつい涼やかな曲を求めてしまいます。で、美音で軽やかなピアノトリオに手が伸びるってわけです。同じくドイツのECMレコードの音源をかけて涼んでおられる方も多いでしょう。タイトル「アイゲングラウ」は目を閉じたときの背景の濃いグレー、本来の光を意味するそうです。

煌めきのピアノで始まる1.Supernumb でその美音に浸ってください。涼やかな余韻が空間に拡がります。プリンス作曲シネイド・オコナーのカヴァーで有名な3.Nothing Compares 2 U のアレンジと演奏に彼の才能を感じます。ずっと聴いていたくなる楽曲です。ドラムスが小気味よい8.Anthem のリフレインも印象的。アルバム全体をとおして歌心を感じます。ハイレゾ高音質でそちら方面にも受けそうなこのアルバムはCDやLPでも発売されているそうです。

2025-08-01

OPT ISO BOXでLAN高音質化

 

オーディオ用のMacbookを有線LAN接続して高音質化する話を以前書きました。今回はその有線LAN部分をオーディオ的にグレードアップしてみました。界隈で話題のTOP WING社製OPT ISO BOX(オプト・アイソ・ボックス)を購入したのです。

OPT ISO BOX。タバコ箱よりちょっと大きい。4万円弱。

Wi-Fiルーターの有線LAN端子→LANケーブル→OPT ISO BOX→LANケーブル→Macbook(有線LANアダプタ)と、LANの途中にかますものです。BOX内で光ケーブル接続を介する「光アイソレーション」と呼ばれるもので、LANに乗るノイズを除去する効果があります。

音質は、以前と比べてもっと漆黒の背景からポッと音像が浮かびあがるような、音そのものが力強さを持って輪郭はっきりと、前後上下方向も表現してくれるようになったと感じられます。生々しさが増して音楽を聴くのがさらに楽しくなった気分です。

思い返せば、サブスクの音って拡がりもあってキレイなんだけど聴き流してしまうところがあると感じていたんです。特にレコードの音を知ってしまうとね。ところがこの光アイソレーションで耳が音楽を聴くことに集中せざるをえない状況になります。

しかも通信速度を10M/100M/1Gbpsの3段階で切り替えることができます。不思議なことに音が変わります。10Mは低域をギュッと前に出してきてロックやモダンジャズがいい感じ。1Gは少し腰高になりますが拡がりがあってハイレゾらしい精細な音。100Mbpsはその中間いいとこ取りな印象で気持ちよく聴けるので僕はここに合わせています。

ちなみにLANケーブルもTOP WING社のUltra Slim Link(8,800円/1m)✕2に変えています(これの効果も影響あり)。同社はDATA ISO BOXというオーディオ専用のネットワーク環境を構築する製品も発売していて併用するといいらしいのですが、まぁ段階的に。

せっかくのQobuz、ロスレスはもちろんハイレゾの大きな皿に乗った食材(楽曲)をしっかり味わいたいという一環です。あぁ...沼の入口に入ってしまいました。でもしばらくこれでいいかな。音に満足しているし。

2025-07-25

Flying? / 桑原あい

 

桑原あい(Ai Kuwabara)は日本のジャズピアニスト。スティーブ・ガッド&ウィル・リーとのトリオやディズニーのカヴァーで既に11枚のアルバムをリリースしています。数々のライヴやテーマ曲での演奏経験もありながら、昨年ロサンゼルスに拠点を移しチャレンジしていこうと。本作はそんな意気込みの感じられる2025年新作です。


穐吉敏子さんや渡辺貞夫さんが渡米した頃とは環境もずいぶんと変わったのかもしれませんが、それでも外国に渡って腕ひとつで勝負していくというのは、いくら経験があるからと言っても大変な心意気だと思います。ジャズミュージシャンたちは僕からすれば想像を超える腕利きばかりですから怯んではいられないでしょう。桑原さんが一番好きな音楽家はクインシー・ジョーンズとのことで、楽曲からビジョンの高さや大きさを感じて、これなら世界と渡り合えるなと思った次第です。

1.Flying? の演奏でスケールの大きさを感じます。サム・ウィルクスBとジーン・コイDsがまたシャープでいい音しています。2.This Love はあのマルーン5の曲ですよ。ジャズアレンジだとこうなるのかーと。ロサンゼルスの山火事に関する短いエピソードがグッときたオリジナル曲6.What hummingbirds teach us about flying も彼女らしいストーリーのある演奏に聴き入ります。ほかにもレッチリやマイケル・ジャクソンのカヴァーもあったりで、まるごと1枚楽しめる気持ちの良いアルバムになっています。

2025-07-18

note仲間オフ会からのボサノヴァ

 

先日、清澄白河のginger2(ジンジャードス)にてnote仲間のオフ会が開かれました。このお店に集まってくる只者ではない音楽好きの方々は、聞けば聞くほど濃くて深くてほんとうに驚きです。僕自身音楽に関わる仕事もずいぶんやってきて知識はあるはずですが、正直なところ甘かった。

今回はnote仲間の一人、パリから一時帰国されるムーンサイクルさんにDJしていただくという魅力的な特典付きオフ会となったのでした。いい具合にお腹もお酒もこなれてきたところで、ボサノヴァを楽しく聴きましょう〜と始まったのでした。

そこはnote仲間のnoterさんですからボサノヴァ名曲を流しておしまい、というわけはありません。アントニオ・カルロス・ジョビン、ヴィニシウス・ヂ・モライスらのボサノヴァ生まれし頃の映像からはじまって、知らない映像が次から次へと。

その後もボサノヴァにつながるブラジル音楽やジャズへの展開、日本でのボサノヴァなどなどムーンサイクルさんならではの選曲と選映像で、深〜く楽しむことができました。そしてジンジャーに捧げるオリジナルソングもご披露(さすがです)。というわけでオフ会以降、家にあるボサノヴァCDをあれこれ。

家にあるCDをひっぱり出してきた。
AUDI-BOOK左から「ボサ・ノーヴァ物語・青春篇」「同・源流篇」「同・放浪篇」



2025-07-11

Shikiori / Sinne Eeg & Jacob Christoffersen

 

Sinne Eeg(シーネ・エイ)はデンマークのジャズヴォーカリスト&作曲家です。女性ジャズヴォーカルを聴く人であれば知っている人多しです。Jacob Christoffersen(ヤコブ・クリストファーセン)もデンマークのジャズピアニストで自身のトリオや経験豊富な伴奏で活躍しています。

2025年の新作は、福岡県の古民家「想帰庵(しきおり)」でのライヴパフォーマンスをおさめたデュオ作品となっています。僕自身、10年以上前にパン屋を開業した時期と重ねて農家さんや古民家をいろいろ訪ねて、その静かな佇まいに魅了されていました。そこに人の温もりがあってなんとも癒やされたものです。そんな空気感を思い起こすことができる素敵な作品に出会いました。

日本語で歌われる3.Soba Flower を聴くと、優しくて透明感のある歌とともに自然を愛する日本人との共通点を感じているのではと思います。アニー・レノックスのソロ作7.Cold ではハスキーでエモーショナルな歌いっぷり。ヤコブのピアノがロマンティックに響いてうっとりします。僕の大好きなジャズスタンダード9.But Not for Me ではスキャットもはさんでスイング&リラックス。場の親密さを感じました。今日は暑さひと息ですが、また暑い夏がやってくるでしょう。このアルバムを部屋に流して涼んでみてはいかがですか。