2025-06-06

フルレンジでサブシステム

 

長いことオーディオ好きをやっている人であれば、メインで聴く以外のサブシステム(または自宅とそれ以外とか)を楽しんでいる方もいらっしゃると思います。同じ音源を違うスピーカーで聴くことで、また曲の印象が違ったりします。

僕はメインはJBL4309という2ウェイスピーカーですが、もう25年以上前に買ったミニコンポ(ビクターFS-10)にセットになっていたフルレンジスピーカーSP-FS10もお気に入りで持っていました。最近これを棚の上に乗せてサブシステムとして鳴らすマイブームの最中です。

ビクターSP-FS10(8.5cmフルレンジ)

ちょっと定評があるスピーカーのようで、のちにウッドコーンに変化していく型です。コンポのほうはとっくにCDプレーヤー部分が壊れ、ボタンも2回押さないと反応しなかったりと覚束ないご様子。アンプ部分はまだ行けるようなので、外部入力にRCA-3.5mmジャックの有線をつけて、iPhoneやCDウォークマンを音源にして鳴らしてみました。

これがやはりというかなかなかに味のある音を奏でてくれます。いつもハイレゾハイレゾ言っているくせに、高いほうも低いほうも鳴らないフルレンジでも楽しいもんだというわけです...。特にヴォーカルの静かな曲なんて、真ん中に“声”がポッと浮かび上がって聴き惚れてしまうほど。ジャズのモノラル音源もこれまた良いんです。音も曖昧ではなく、しっかりクッキリ描いてくれます。※コンポに「Super Pro Sound」なる低域増強ボタンが付いていて、時代を感じますが気に入っています。

音の出口であるスピーカーやヘッドフォン(イヤフォン)を、違うキャラで複数持っていると、よく聴いた曲でもまた違った味わいがあるというのがオーディオの楽しいところです。

2025-05-30

Downhill From Here / Gilad Hekselman

 

Gilad Hekselman(ギラッド・ヘクセルマン)はイスラエル出身のジャズギタリスト。ニューヨークを中心に活躍しています。ジョン・スコフィールドGやアントニオ・サンチェスDsとの共演やエスペランサ・スポルディングのアルバムに参加するなど、カート・ローゼンウィンケル以降の最注目ギタリストだそうです。2025年新作アルバムはリーダー作品として9作目にあたります。

今回は、ロイ・ヘインズの孫であり超絶ドラマーのマーカス・ギルモアと、ブラッド・メルドーやパット・メセニーと共演でも印象深いラリー・グレナディアBとの鉄壁といえるトリオ作品。3人が会話するさまは、あのメセニーのトリオを想起させます。ギラッドの音はより浮遊感があって彼らの音空間に浸ると気持ちよくて時間を忘れます。

数多くの名演が存在するバート・バカラックの4.Alfie はなんとも染み入る演奏。メセニーの「Alfie」と聴き比べても面白いかも。5.Wise Man でのマーカスのドラムスの雄弁なこと。好きなのは7.Scoville 。ちょっと歪んだギターはもしかしてジョンスコ風?、でも好きな音です。跳ねたリズムが独特なファンキーサウンド。最新鋭ギタートリオであり、今後の定番にもなり得る作品だと思います。

2025-05-23

ヘッドフォンライヴに行きました

 

5月10日赤坂にあるMZES TOKYO(エムゼス)の「BANDiSH HEADPHONE LiVE」に行きました。観客全員がヘッドフォンをつけてライヴ鑑賞するという僕にとって初体験のライヴでした。YouTubeでスナーキー・パピーが演っているのを観たことがあって、店長から企画を聞いたとき「あれか!楽しそう」と思って乗り気でした。

Snarky Puppy - Trinity (GroundUP Music NYC)


MZESでもミュージシャンと観客が、ステージと客席に分かれているのではなく、機材を囲んで同一円上に車座になります。だから隣にミュージシャンが立っていて楽器もすぐそば、なんて人もいます。ミュージシャン同士も少し遠くでアイサインを送りながら演奏して、観客もその中にいるような感じです。

観客入り前。中央に機材を囲んで着席。となりにミュージシャンが立つ。

そして全員がヘッドフォン。持ち込んでいる人もいれば、店から借りる人も。自席のミキサーでボリューム調整して聴くことができます。ライン(マイクで音を拾うのではなく、ケーブルで直接つなぐ楽器)の音が(もちろん)とてもクリアー。まるでレコーディング現場に一緒に入って音を聴いているかのように各楽器の演奏を聴くことができます。

ちなみに演奏途中でヘッドフォンを外すと、ドラムスとサックスの音しか聴こえない。そりゃそうだ。再度ヘッドフォンをつけると彼らのミラクルな演奏が繰り広げられています。ふだんイヤフォンやヘッドフォンで音楽を聴く人は、このほうが違和感ないんじゃないかな。実際観客のみなさんも首や肩をゆすって聴き入っていました。(手拍子しても聴こえない、んだ)

BANDiSHは若手の敏腕ミュージシャンによるインストゥルメンタルグループ。メンバーは中林俊也Sax、ほんまひかるSax、宮本憲G、金沢法皇Key、杉浦睦B、大場俊Ds。ジャズやフュージョン、ポップスを新しい切り口で聴かせてくれる、観て聴いて楽しいライヴでした。

当日は映像制作チームも入って、各楽器にカメラが向けられ、ソロまわしをリモートで回転するカメラがとらえるという仕掛けもあり、後日映像コンテンツとしてリリースするとのこと。音源もサブスクに掲載されるそうなので楽しみにしています。

六本木ジャズクラブ時代の仕事仲間であるB店長、そして音響エンジニアのKくんにも久々に会えてうれしかった。Sシェフとチームワークで新しいことにチャレンジしている姿がかっこよかったです。

2025-05-16

EVERYDAY / 黒田卓也

 

黒田卓也さんは日本のトランペッター。ニューヨーク・ブルックリン在住。僕も2014年「Rising Son」を聴いて以来気に入って、日本のミュージックシーンをリードする存在として注目してきました。彼のラジオを聴いたりすると、その気さくでお茶目なトークも魅力的で、きっと若手ミュージシャンたちにとっていい兄貴的存在なんだろうと思っています。

この2025年新作は“トラック・メイキングとスタジオ・セッションの究極の融合を目指した”とのことで、ただならぬ緻密さとフィジカル的に高い演奏力を聴かせてくれています。サブスクのおかげで様々なジャズの新作を聴くことができるわけですが、黒田さんの作品は本当に世界水準で高いオリジナリティを感じます。日本発ではあるもののニューヨークの今の空気を伝えてくるようです。

タイトル曲2.EVERYDAY を聴けばあぁコレだとなります。鋭くキレのよいリズムと緻密なアレンジ。でもライヴで演奏している姿も想像できる、そんなサウンド。6.Off To Space のドラムスがまたカッコいい!リズムが凝っているのになぜか余裕を感じさせるのが兄貴のなせる技でしょうか。黒田さんらしさは8.Hung Up On My Baby にも出てきます。どこか日本の民謡のようなお祭りのような親しみを感じる曲です。ニューヨーク&日本の今のジャズを詰め込んだとびきりカッコいいアルバムになっています。

2025-05-09

Qobuz Connect きた!

 

今週Qobuzのデスクトップアプリをアップデート更新したら、「Qobuz Connect」ができるようになっていました。先行アクセスとのことで、しばらくしたらみんなできるようになるでしょう。個人的に待望の機能のリリースです。

Spotifyでは昔から「Spotify Connect」ができてコレ便利だったのですが、言葉を借りると“特定のデバイスから他のデバイスの再生を遠隔操作”できるというもの。僕の場合は家ではMacBook AirをオーディオにUSB接続してQobuzを聴いているのですが、iPhoneでQobuzアプリを立ち上げれば、同じネットワーク(LAN)上のMacを再生出力先として指定できるようになった、ということです。※WindowsもAndroid端末もOKです。

左下(赤丸)の表示が出ていれば、音はそちらから出力

つまりiPhoneで曲やプレイリストを選んで再生すると、離れた場所にあるMac経由でスピーカーから音が出る(もちろんハイレゾ対応のまま)。はい、それだけのことです。でも手元にあるiPhoneで遠隔操作できるのはモノグサ太郎にとってはありがた山なんです。

おととし紹介した「離れたMacを操作する」のやり方(Macの画面共有機能)を続けてきましたが、仕事中ならともかく手元のMacを開く必要がなくなりました。

Apple Musicにはこの機能ないんです。AirPlay推しなんでしょうか。アプリで「Remote」という、ライブラリ(に入れてあれば)をiPhoneで選曲再生できる、もしくはいまかかっているプレイリストの再生停止次曲戻曲できるものがあるので、まあいいとします。

そんなのBluetoothでiPhoneから飛ばせばいいんじゃ、それこそAirPlayがあるでしょ、との意見もございましょう。無線も最近は充分に音がイイので老耳には差異がわかるまいとのお説ごもっともです。まぁでもQobuzハイレゾを可能なかぎりそのまま拝聴することにこだわってみようと思っています。

2025-05-02

Tomorrow We'll Figure Out the Rest / Silje Nergaard

 

Silje Nergaard(セリア・ネルゴール)はノルウェーのジャズシンガー&ソングライター。1990年のデビューアルバムをパット・メセニーがプロデュースしたことで有名になったと思います。2025年の本作は20作目(DVD含む)。“両親への深い思い、遠い日の記憶、家族やさまざまな人生の物語にインスパイア”とのことで、1966年生まれ(僕のひとつ下)であることや近年の自分の境遇と重ねて、思いを馳せながら聴いております。

女性ヴォーカルの楽曲はジャズでも人気で、ひとりひとりの個性が感情を豊かに表現していて味わい深いのが魅力。アルバムの中の楽曲によっても微妙に表情を変えていて、繰り返し楽しめます。セリアの歌声からはノルウェー(北欧)の香りが感じられて、行ったことはないけれど、大自然や空気の冷たさや夜の長さを想像することができます。

まずは1.You Are the Very Moon が僕の知るセリアのイメージ。ストリングスがあまーく入ってきてなんとも夢心地です。好きなのは5.Vekket i tide 。母国語でしょうか、ノルウェーを感じます。ストリングスの美しさが際立つバラード8.Dance me Love ではセリアの魅力がじんわり伝わってきて沁みます。好きなヘルゲ・リエンのピアノが全編にわたりこれまた美しい。心は温まるアルバムです。

2025-04-25

ピンク・フロイドをIMAXしてきました

 

ピンク・フロイド・アット・ポンペイ』をTOHOシネマズ日比谷で観てきました。1971年10月イタリアのポンペイ遺跡での無観客ライヴ・パフォーマンスを収録したもので、1972年に映画公開。今回この映像を4Kデジタルリマスターし、さらにレーザー投影&12chサウンドのIMAXシアターで堪能してきました。


向かって左側の席だったので、眼の前にデヴィッド・ギルモアのギターが定位してなんとも嬉しい感じ。そしてギルモアさん若い!途中「狂気」のレコーディング舞台裏シーンも織り込まれたたりして、ちょっと和みました。

それにしても高精細な画質と音質に驚きました。50年以上前の素材が良かったのか、デジタル技術のすごさでしょうか。ギルモアのストラトやスライド・ギター、ロジャー・ウォーターズのブリッジ付近でのピッキングベース、タム多用&ツーバスのニック・メイスン、リチャード・ライトのオルガン、どれもがくっきりはっきり観れて、これぞ映画ライヴ鑑賞の醍醐味でした。

僕よりもさらに年上のファンが大勢観に来ていました。場内がピンク・フロイドのサウンドに没入した空気で満たされていました。帰宅したら「The Dark Side of the Moon(狂気)」をアルバム通しで浸ることに決めて映画館を出ましたとさ。