2025-07-11

Shikiori / Sinne Eeg & Jacob Christoffersen

 

Sinne Eeg(シーネ・エイ)はデンマークのジャズヴォーカリスト&作曲家です。女性ジャズヴォーカルを聴く人であれば知っている人多しです。Jacob Christoffersen(ヤコブ・クリストファーセン)もデンマークのジャズピアニストで自身のトリオや経験豊富な伴奏で活躍しています。

2025年の新作は、福岡県の古民家「想帰庵(しきおり)」でのライヴパフォーマンスをおさめたデュオ作品となっています。僕自身、10年以上前にパン屋を開業した時期と重ねて農家さんや古民家をいろいろ訪ねて、その静かな佇まいに魅了されていました。そこに人の温もりがあってなんとも癒やされたものです。そんな空気感を思い起こすことができる素敵な作品に出会いました。

日本語で歌われる3.Soba Flower を聴くと、優しくて透明感のある歌とともに自然を愛する日本人との共通点を感じているのではと思います。アニー・レノックスのソロ作7.Cold ではハスキーでエモーショナルな歌いっぷり。ヤコブのピアノがロマンティックに響いてうっとりします。僕の大好きなジャズスタンダード9.But Not for Me ではスキャットもはさんでスイング&リラックス。場の親密さを感じました。今日は暑さひと息ですが、また暑い夏がやってくるでしょう。このアルバムを部屋に流して涼んでみてはいかがですか。

2025-07-04

プログレ・サラウンド三昧

 

まったく話題にすらならないSACDサラウンドDVD- Audioですが、個人的に盛り上がっています。わけは何と言っても“図太い音”です。CDはもちろんアナログレコードで体験した音と比較しても明らかに違う音がします。

そりゃサラウンドですから、各スピーカーから出ている音が違うので当然ちゃ当然。サブウーファーもあるし、拡がりも別物です。つまり2chステレオを楽しむのとは別の話ですね。

それにしてもこの違い...。おそらくサラウンド用にミックスしなおす過程で生まれた音だと思います、とにかく生々しく「ズドン!」と来ます。

サラウンドで聴けるプログレの名盤たち

写真上段左から

  • PINK FLOYD「The Dark Side Of The Moon(狂気)」(1973年作品)
    SACD5.1ch/SACDstereo/CDstereo(2019年)
  • YES「Fragile(こわれもの)」(1971年作品)
    SACDマルチch/SACDstereo/CDstereo(2011年)
  • GENESIS「A Trick Of The Tail」(1976年作品)
    SACDマルチch/SACDstereo/CDstereo、DVD Dolby Surround/DTS Surround/Extras(2007年)

写真下段左から

  • YES「Close To The Edge(危機)」(1972年作品)
    Blu-ray5.1ch/Blu-rayStereo/Additional Material、CDstereo(2013年)
  • EL&P「Tarkus」(1971年作品)
    DVD-Audio5.1ch/DVD-AudioStereo、CDoriginal album、CD2012stereo mix(2012年)
  • KING CRIMSON「Red」(1974年作品)
    DVD-Audio5.1ch/DVD-AudioStereo/DVD DTS5.1ch/DVD PCMstereo/Video Content、CDstereo(2009年)
  • KING CRIMSON「Discipline」(1981年作品)
    DVD-Audio5.1ch/DVD-AudioStereo/DVD DTS5.1ch/DVD PCMstereo/Additional&Video、CDstereo(2011年)

    ※5.1chやマルチchはサラウンドってことです。

70年代プログレの鮮烈な音を浴びることができます。圧倒されるばかりです。いろいろありながらもよくこんな作品を作ったなぁと畏怖の念を抱きます。

ちなみにクリムゾンのディシプリンは80年代ものですが、9月の再現バンド“BEAT”の武道館ライヴも期待して加えました。ほかにもRUSH「Moving Pictures」(1981年作)もあってこのDVD-Audioサラウンド(2011年)もスゴいんです。

2025-06-27

Words Fall Short / Joshua Redman

 

Joshua Redman(ジョシュア・レッドマン)のブルーノートからの2作目で2025年新作です。ジョシュアSaxのほか、ポール・コーニッシュP、フィリップ・ノリスB、ナジル・エボDsからなるカルテットで、一回り若いメンバーながら実に成熟した演奏を聴かせてくれています。

Joshua Redman - Words Fall Short

ひとつの曲をじっくりと聴いていくと、繊細に物語が進行していくように展開して、なんてよくできた曲なんだと思うことになります。一見派手さはないですし、その演奏技術をひけらかすようなこともないのですが、あぁ全員ただものではないんだなとわかります。ここにはこれぞジャズ、“言葉には言い表せない”表現が詰まっています。

静かに始まる1.A Message To Unsend から聴かせてくれます。徐々に熱を帯びていくさまに惹き込まれていきます。タイトル曲3.Words Fall Short のベース音がいいですなぁ。ジョシュアのソプラノサックスがクールに響きます。4.Borrowed Eyes のバラードではフィリップのベースによるブルースが光ります。ジョシュア曰く「クリスチャン・マクブライド以来、すべてを備えたアコースティックジャズベーシスト」とのことで今後も要注目です。7.She Knows ではフリーに行きますが、苦手な人でもこのカルテットの音色であればとオススメします。

2025-06-20

STAXのイヤーパッド交換

 

(娘)「顔の横に“ひじき”が付いているよ」、(僕)ひじきは食べていない...。

STAX SR-L700 MK2(イヤースピーカーと呼ぶ)のイヤーパッドが劣化して剥がれたものが付着していたのでした。剥がれてきているのは知っていたけれど、まぁいいかと使い続けていました。でもたしかにちょっとヘタれてきているかな、とSTAXの公式通販サイトに発注したのでした。

放っておいた僕が悪かった。

新しいイヤーパッドが届いた。

交換完了!自分で簡単に交換できます。

さっそく装着したら、フィット感良好。不思議なもんで音まで良くなった気がします。実際ヘッドフォンのイヤーパッド交換による効果は経験しています。ちなみにこの機種のイヤーパッドは、肌に当たる部分が本革でそこは見た目には劣化がなく、周辺の取付部分が人工皮革で、この部分が経年劣化して剥がれていたのでした。まぁずっと使っているとクッションもヘタれてくることは間違いなく、弾力も復活してよかったです。

YouTubeを見たりしていると、ついつい新製品や音質が良くなるかもしれないグッズやアクセサリーに目移りしてしまいます。が、まずは手持ちの機材をちゃんとメンテして、その性能を発揮させてあげないともったいないですね。


2025-06-13

Out Late / Eric Scott Reed

 

Eric Scott Reed(エリック・スコット・リード、またはエリック・リード)の2025年Smoke Sessions新作アルバムです。メンバーはエリックPのほか、ニコラス・ペイトンTp、エリック・アレクサンダーTs、ピーター・ワシントンB、ジョー・ファーンズワースDsというオールスターメンバー。ニューヨークに行ったならぜひともこのメンバーのセッションを聴いてみたいと夢見ています。今回もまるでSmokeにいるような素晴らしい録音で聴くことができます。

題名にもあるとおり、深夜の雰囲気を伝えるもので、“ミュージシャンの生活、つまりナイトライフやアクティビティ、ニューヨークのヴァイブレーションの感覚やエネルギーを指しています。”とのこと。演奏を聴いているとなんとも落ち着きます。仕事帰りにこんなジャズクラブでグラスを傾けて、緊張をほどいていくことができたらと思っていたものです。

1.Glow なんて曲で始められたら、ああ大人っていいなと思います。勢いでもなくバラードでもなくスローなスイング。名うてのミュージシャンが醸す余裕の演奏。3.Shadoboxing も心地よくマッサージしてくれます。身を委ねるだけでよいんです。4.They では軽快なスイング。明日への元気につながります。“すべてファーストテイク、ヘッドフォンもオーヴァーダビングもなし”とのことで昔ながらのレコーディング方法だからこそのライヴ感を味わえる作品です。

2025-06-06

フルレンジでサブシステム

 

長いことオーディオ好きをやっている人であれば、メインで聴く以外のサブシステム(または自宅とそれ以外とか)を楽しんでいる方もいらっしゃると思います。同じ音源を違うスピーカーで聴くことで、また曲の印象が違ったりします。

僕はメインはJBL4309という2ウェイスピーカーですが、もう25年以上前に買ったミニコンポ(ビクターFS-10)にセットになっていたフルレンジスピーカーSP-FS10もお気に入りで持っていました。最近これを棚の上に乗せてサブシステムとして鳴らすマイブームの最中です。

ビクターSP-FS10(8.5cmフルレンジ)

ちょっと定評があるスピーカーのようで、のちにウッドコーンに変化していく型です。コンポのほうはとっくにCDプレーヤー部分が壊れ、ボタンも2回押さないと反応しなかったりと覚束ないご様子。アンプ部分はまだ行けるようなので、外部入力にRCA-3.5mmジャックの有線をつけて、iPhoneやCDウォークマンを音源にして鳴らしてみました。

これがやはりというかなかなかに味のある音を奏でてくれます。いつもハイレゾハイレゾ言っているくせに、高いほうも低いほうも鳴らないフルレンジでも楽しいもんだというわけです...。特にヴォーカルの静かな曲なんて、真ん中に“声”がポッと浮かび上がって聴き惚れてしまうほど。ジャズのモノラル音源もこれまた良いんです。音も曖昧ではなく、しっかりクッキリ描いてくれます。※コンポに「Super Pro Sound」なる低域増強ボタンが付いていて、時代を感じますが気に入っています。

音の出口であるスピーカーやヘッドフォン(イヤフォン)を、違うキャラで複数持っていると、よく聴いた曲でもまた違った味わいがあるというのがオーディオの楽しいところです。

2025-05-30

Downhill From Here / Gilad Hekselman

 

Gilad Hekselman(ギラッド・ヘクセルマン)はイスラエル出身のジャズギタリスト。ニューヨークを中心に活躍しています。ジョン・スコフィールドGやアントニオ・サンチェスDsとの共演やエスペランサ・スポルディングのアルバムに参加するなど、カート・ローゼンウィンケル以降の最注目ギタリストだそうです。2025年新作アルバムはリーダー作品として9作目にあたります。

今回は、ロイ・ヘインズの孫であり超絶ドラマーのマーカス・ギルモアと、ブラッド・メルドーやパット・メセニーと共演でも印象深いラリー・グレナディアBとの鉄壁といえるトリオ作品。3人が会話するさまは、あのメセニーのトリオを想起させます。ギラッドの音はより浮遊感があって彼らの音空間に浸ると気持ちよくて時間を忘れます。

数多くの名演が存在するバート・バカラックの4.Alfie はなんとも染み入る演奏。メセニーの「Alfie」と聴き比べても面白いかも。5.Wise Man でのマーカスのドラムスの雄弁なこと。好きなのは7.Scoville 。ちょっと歪んだギターはもしかしてジョンスコ風?、でも好きな音です。跳ねたリズムが独特なファンキーサウンド。最新鋭ギタートリオであり、今後の定番にもなり得る作品だと思います。